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【イベントレポート】データ×AI ―新規事業企画フェーズにおける効果的なデータ活用の方法―

AI・機械学習
【イベントレポート】データ×AI ―新規事業企画フェーズにおける効果的なデータ活用の方法―

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

web3時代の到来を受けて、自社データを有効活用したい、自社の基幹システムにAIを用いたいといった需要は高まっています。一方で、データをどのように今後のイノベーション創造につなげればいいのか、悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。

そこで2022年11月16日実施のウェビナーには、行動変容デザインのプロである玉木氏にお越しいただきました。
「データ×AI」を考える際に押さえておきたいキーワードや実際の事例、新規事業に有効な自社データ×オープンデータを掛け合わせたペルソナ抽出方法などについて語っていただいています。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

玉木 穣太氏

玉木 穣太氏

curioph株式会社代表 兼 株式会社カオナビ外部顧問 CDO
W+K Tokyo, AKQA Tokyoなど広告系エージェンシーや、AI系ベンチャーCogent Labsでデザイナーとしてキャリアを積んだ後、2019年3月株式会社XCOG設立(2023年6月よりcurioph株式会社に事業をスピンオフ)、2020年7月カオナビCDOに就任。カオナビでは、事業戦略、ブランディング、オフィス計画、組織づくり、メディア、プロダクト作りと多岐に渡り支援。自社curioph株式会社では独自アルゴリズムにより、次世代の企業活動と消費行動の接点を作る「curioph」を開発中。行動変容デザインが得意領域で、ブランディングから新規事業開発まで手掛ける。

佐々木 博明氏

佐々木 博明

プロシェアリング本部 エンタープライズ推進チーム マネジャー
ディー・エヌ・エー、リクルート、ビズリーチにてWebマーケティングや新規事業立ち上げなど幅広く担当。その後、PERSOL INNOVATION FUND合同会社でHRTech企業への投資案件やM&A業務に従事。サーキュレーション入社後は大手企業様へのDXや新規事業の支援に従事。製造業・流通業・通信など幅広い業界に対して、DX推進に必要なマーケティング・セールス・ECの戦略立案、業務・システム改革、組織改革などのコンサルティング実績を持つ。

山中 かれん

山中 かれん

イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、IT・コンサル業界の中途採用における課題解決に従事。ベンチャー中小企業から大手外資系企業まで幅広い採用支援を経験後、社内組織営業力向上に向けた研修立案、商品企画に携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/11/16時点のものになります。

データ活用・利活用の目的と現状

企業におけるデータ活用の目的は、大きく2つの領域に分けられる。一つは、内部統制の強化や業務プロセスの効率化といった、「守り」の領域。もう一つは、顧客や市場の調査分析、商品やサービスの検討・改善といった「攻め」の領域だ。
「攻め」の領域は直接的にビジネスのマネタイズに結び付くため、多くの企業がデータ活用を試みていると考えられる。一方で、ほとんどの企業はまだまだデータを部分連携しかできていないのが現状だ。業界別に見ても、高度な分析ツールの活用ができているのはごく一部にとどまる。全体としては、簡易的な手法でデータ活用を試行錯誤している状態なのだ。

web3時代のデータ活用・利活用

企業がデータ活用に苦戦している一方、現在はweb3時代の到来が叫ばれており、従来のようにWeb上からユーザーデータを収集するだけでは時代に適応できなくなる可能性が高い。今後はAIの導入が必須になると予想されることも踏まえつつ、以下では今、押さえるべきキーワードについて事例とともに教えていただいた。

押さえるべき3つのキーワード

大前提として、web3の時代はデジタルの在り方はもちろん、消費者層の価値観など大きなファクターが変化を遂げる点に着目しなければならない。そこでキーワードになるのが、「データ」「Z世代」「安心と信頼」の3つだ。

web3時代のデータ活用①

最初のキーワード「データ」についてポイントになるのは、データそのものが個人で所有されるということだ。「ユーザー自身がデータを作り、管理し、発信する時代が到来するため、従来は企業が担っていた『データをどう使うか』という部分がユーザーに委ねられる」と玉木氏。

佐々木:企業主体から個人目線になると、プロダクトの考え方も作り方も大きく変わりますよね。次の「Z世代」というキーワードは何がポイントになるのでしょうか?

玉木:Z世代は、データがどういう風に使われているのかわからないメディアから配信される情報を毛嫌いする傾向です。より新しいメディアに触れているのも彼らなので、従来の思想が全く通用しなくなります。そういう人たちのために、新しい作戦やデザインが必要ですね。

こうしたZ世代の価値観に紐付いたワードとして押さえておきたいのが、「安心と信頼」だ。情報をセキュアに取り扱う、システムをブラックボックス化させないなど、情報の民主化をするムーブメントが訪れると玉木氏は語る。

【事例】玉木氏が中心となって開発したweb3時代のデータ活用システム“curioph”

続いては、curiophが開発を進めているENGINE PFの紹介だ。web3時代のデータ活用システム“curioph”は、マーケティングしたいターゲット層が何に興味関心を抱いているのかを可視化し、潜在層をロイヤル化するサービスとして提供されている。

web3時代のデータ活用②

玉木:売りたいもの、訴求したいものがゴールにあったとして、販売のスタートには起点となるようなトレンドや流行などがあると思います。そこからどう売りたいものにつなげるのかをデータ×AIで補完し、つないでいくのがcuriophです。

佐々木:潜在層の見える化のために独自のアルゴリズムを利用しているそうですが、どのような考え方で設計しているのでしょうか?

玉木:共起ネットワークという、自然言語処理のアルゴリズムの一種を使っています。連想ゲームのように同時に使われている言葉同士をつなぎ、樹形図を作る可視化の方法ですね。さらに企業が持っている独自データを用いて、それぞれのドメインに特化した路線を描いていきます。

ワード自体はオープンデータから吸い上げています。例えば「お寿司」と「男性」という概念の間にあるのが何なのかを、乗換案内のように出すイメージですね。これはまさに、デザイナーなどがクリエイティブを考えるときにやっていることと同じです。それをシステム化しました。

デザイン思考を持った方の認知プロセスをAIで補う、またはAIで作ることをコンセプトにしています。

新規事業に有効な自社データ×オープンデータを掛け合わせたペルソナ抽出方法

実際にデータ活用によって新規事業を創出しようと思った場合、ポイントになるのはカスタマージャーニーを適切に描き、ペルソナの解像度を高く持つことだ。この点で、いかに自社データをオープンデータと掛け合わせてペルソナを抽出するべきなのか、ポイントも伺った。

新規事業のデータ活用目的・ゴール

新規事業におけるデータ活用のゴールは、「予想を用いた最適化」だ。顧客や市場の調査分析を行い、いつ、誰に、いくらで売るべきなのかを読み解く必要が出てくる。

玉木:既存のアンケートやマーケティング、モニタリング調査から得た情報は、数万人に聞いたとしても変数が多くなってしまいます。ユーザーは調査に回答するインセンティブ目当てて答えたのであって、自分たちが目的とする事業のために回答しているわけではないからです。
一方で有効的なのが、企業が独自で持つデータです。そのデータとオープンデータを組み合わせることによって、よりリッチな情報になるのではないでしょうか。例えばSNSなんかは、情報の宝箱のようなものです。投稿された内容や画像をどのように加工していくのかは、センスが問われる部分ですけどね。

佐々木:SNSのデータは簡単に取得できるものなのでしょうか?

玉木:そうですね。今は海外の大企業が開発したAIの大規模モデルを用いて、各ドメインに特化したAIを開発するのがデファクトになりつつあります。例えばお絵描きAIや言語AIなどがあるのですが、これらにはSNSデータが使われています。自社でSNSデータを取得してAIを作るというよりは、そういった既存のプロダクトを利活用する形になるでしょう。

佐々木:SNSのデータによって、ユーザーごとの特性などは分析できるものなのでしょうか?

玉木:SNSを使っている時点でバイアスがかかっている事実は気にする必要がありますが、個人の人となりはかなり浮き彫りになりますね。

AIを導入する上でのステップとポイント

実際にデータ活用のためにAIを導入する場合、5つのステップを踏むことになる。課題の抽出、課題の解決策の検討、人間作業の分解、AIで生み出せる価値の検討、開発・導入だ。
これらの中で特に重要なのは、ステップ4だ。明確な課題に対してどのようにAIで価値を生み出せるのか、実装・運用を見据えたPoC計画の策定が求められるだろう。

データ×AIまとめ

今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。

web3時代のデータ活用③

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。データ×AIにご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】データ×AI ―新規事業企画フェーズにおける効果的なデータ活用の方法―
本ホワイトペーパーは、2022年11月16日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。 2022/11/16回では、自社データをどう活用し今後のイノベーション創造に繋げていこうか悩んでいる新規事業責任者・経営企画室長の皆様に向けて、ビジネスとアカデミック両面から、玉木氏に事例をもとにご紹介いただきました。