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【イベントレポート】DAO×Web3 ―エストニアでブロックチェーン事業等4社起業した矢野氏が語る、ポストGAFAMに迫る新規事業とは―

新規事業開発

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/07/26回では、Web3、メタバース、NFT、DAO等の海外トレンドをいち早く自社に取り入れたい皆様に向けて
エストニアやドイツにてWeb3関連事業を手掛けてきたテクノロジー活用のプロ 矢野氏に、世界のテクノロジー時流とWeb3に適応するために知っておくべきポイントをご紹介いただきました。
「最先端技術を活用した新規事業の構想はあるが、日本市場とマッチングさせられない」
「Web3、メタバース、NFT、DAOなど海外トレンドをいち早く自社に取り入れたいが知識がない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

矢野 圭一郎氏

矢野 圭一郎氏

株式会社SWAT Lab 代表取締役
Google,Salesforceで成長期のSaaS事業に携わる。IEビジネススクールMBA取得後、ベルリンに拠点を移し現職。エストニアやドイツにてWeb3関連事業やオープンイノベーション支援事業等を起業後、SWAT Labを創業。Web3時代に向けたコミュニティベースの課題解決を企業向けに提供する。共著書”にネクストシリコンバレー”日経BP社

佐々木 博明氏

佐々木 博明

プロシェアリング本部 エンタープライズ推進チーム マネジャー
ディー・エヌ・エー、リクルート、ビズリーチにてWebマーケティングや新規事業立ち上げなど幅広く担当。その後、PERSOL INNOVATION FUND合同会社でHRTech企業への投資案件やM&A業務に従事。サーキュレーション入社後は大手企業様へのDXや新規事業の支援に従事。製造業・流通業・通信など幅広い業界に対して、DX推進に必要なマーケティング・セールス・ECの戦略立案、業務・システム改革、組織改革などのコンサルティング実績を持つ。

酒井 あすか

酒井 あすか

イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/07/26時点のものになります。

Web3が世界で注目されている理由とは?

現在はWeb2からWeb3へと移り変わっていく過渡期にある。Web2――プラットフォーマーが大きな力を持ち、企業が個人データを管理していた在り方から、今後はいわゆる「自己主権型」で、個人が自らの情報を管理するインターネットが求められる。これがWeb3の概念だ。
Web3では個人や企業、DAO同士の共創が生まれ、トークンの存在により資本の概念も変わっていく可能性がある。また、グローバルハブな世界からハイパーコネクトな世界へと変化する点も見逃せない。世界中どこにいても、誰もが同じような情報を得て仕事ができるようになるのだ。

もはや社会的インフラであるインターネットの在り方の変化は、社会経済や組織形態、個人の働き方全てに影響する。本ウェビナーではその点も踏まえ、どのようにWeb3をビジネスに生かしていけるのかを、講師の矢野氏にお伺いしていった。

【事例】欧州で見た最先端テクノロジーWeb3×DAOを解説

今回ご登壇いただいた矢野氏は、GoogleやSalesforceといった「Web2企業」に長年携わり、2015年にドイツのシリコンバレーと言われたベルリンに移住。現在もベルリンを拠点に、最先端テクノロジーを活用した多数の事業を展開しているプロフェッショナルだ。矢野氏が創業したSWAT Labは東京を拠点としつつも、メンバーは各国に散らばる分散型チームで運営されているという。
そんな矢野氏がこれまでにどんな事業を手掛けてきたのか、必ずしも大成功するとは限らない最先端テクノロジー特有の事情も含めて、実績を教えていただいた。

[矢野氏の実績1]芸術家向けICOプラットフォーム

最初にご紹介するのが、芸術家向けICOプラットフォーム「NINJA Platform」だ。矢野氏はエストニアで法人を立ち上げ、「NINJA Token」による芸術家の資金調達を可能にした。

矢野:これはICOブームだった2017年頃に手掛けた事業です。エストニアは比較的リーガルが柔軟だったため、ドイツや日本、フランスなどからメンバーを集めてe-Residency※で法人を立ち上げました。今では当たり前のようにトークンを発行できるサービスがありますが、それをノンテックの人たちでも簡単にできるようにすることを目指したサービスです。
ヨーロッパやエストニアなどでは、当時からブロックチェーン関係のスタートアップが数多く存在していましたし、分散化したチームでデジタルビジネスを作る手法は10年ほど前からありました。同様の流れで立ち上げたサービスでしたが、やはり各国の規制やルール面で難しい部分が多く、弁護士などに資金を使ってしまった結果開発費用の工面が難しくなり、失敗をしてしまった経緯があります。

※世界初の電子国民プログラム制度

[矢野氏の実績2]IPFSリーガルストレージ

佐々木:個人的に興味があるのですが、リーガルストレージも作られていたそうですね。

矢野:ブロックチェーンに似ているIPFSという分散型のストレージサービスを利用して何かできないかと考え、エンジニアと一緒に作ったのが「Cusaly.me」です。
こうしたブロックチェーンやWeb3などのサービスで難しいのは、Web2やスタートアップのセオリーである、「仮説を立ててプロトタイプを作り、PMFさせていく」プロセスの実施です。なぜなら一般に浸透しているサービスでも概念でもないため、刺さるユーザーを想定しにくいのです。
そこで今は、Discordでコミュニティを作って盛り上げ、そこからDAO化していくような流れがありますね。当時はDeFiもNFTもなければトークンエコノミーもメジャーではなく、「コミュニティを盛り上げる」という発想に行き着かなかったのですが、やはりコミュニティベースで想定ユーザーを掴むのが大事です。

[矢野氏の実績3]企業の課題解決エンジン

もう一つ、矢野氏が手掛けたのが企業の課題解決エンジン「SWAT Lab」だ。現在矢野氏が代表取締役を務める同名企業のプロダクトであり、「エキスパートDAOを目指している」という。

矢野:今は会社組織に所属せず、場所や時間を問わずに集まる「新しい働き方」を求める人たちが増えています。そういう優秀な人材のDAOのような集まりをネットワーク化し、いわゆるDAO型のコンサルティング企業というコンセプトで運営しているのが本サービスです。企業の課題に対して個人をチーム化し、解決を目指す仕組みです。

世界のテクノロジー時流から見るWeb3のハードル

海外や日本を拠点に、最先端テクノロジーの可能性を追い求め続けている矢野氏。その経験を踏まえ、現在世界のテクノロジー時流はどのような動きを見せているのかについても簡単に伺った。

矢野:基本的に国内も海外も大きくは変わらず、Web3領域は技術とリーガルのイタチごっこが常に起こっています。例えば日本の税制ではトークンを発行すると課税負担が大きいため、昨年は多くのWeb3起業家がドバイに移住しました。ほかにもシンガポールやリスボン、スイスなどが移住先として挙げられます。
もう一つの難しさは浸透速度です。私はずっとクラウドコンピューティングの分野にいたので、Web3もクラウドと同じようなスピードでどんどん市場に広がっていくと思っていましたが、実際には一般層に受け入れられるようなレベルになるまでに、かなり時間がかかっているなと。
AIなどは既存の仕組みを補助するテクノロジーで企業や既得権益に受け入れられやすい一方、Web3やブロックチェーンはシステムそのものを根底から変えていく技術なので、法律やシステムから反発され、ハードルが高くなってしまうのだと感じています。

矢野氏はもう一点、従来の市場競争の在り方との違いも指摘している。

矢野:今までのように国内で何かやるというよりは、ベルリンのスタートアップがジブラルタルやスイスに法人を持って分散型チームを作っているように、国をある意味「リーガルを提供するサービス」と捉えて展開する企業が増えています。今までのように海外法人を立て、そこで市場を取るという考え方とは異なってきそうです。

日本企業がWeb3に適応するために知っておくべきポイント

ビジネスに大きな変革をもたらし、新たな概念を生み出していく可能性が高いWeb3。すでに多数の実績を通してその特性を掴んでいる矢野氏に、日本企業が今後Web3に適応していくために知っておくべきポイントについて3つ伺った。

キラーワード1:Web3

第一のキラーワードとなるのは、ずばり「Web3」そのものだ。中央集権型だったWeb2が、今後はWeb3で分散型インターネットになるという考え方自体はすでに広く知られているが、矢野氏は実際にWeb3に対してどのような見解を持っているのだろうか。

矢野:スライドにも「思想がP2P※」書いてある通り、Web3はWeb2でGoogleやFacebookといった企業が私有地化していたインターネットを公道に戻し、プラットフォームをプロトコルへと転換します。そのプロトコルが、これからの会社の仕組みの代わりになるでしょう。
Web3の中にはDeFiやNFT、DAOなどいろいろな要素がありますが、基本的には公道に戻ったWebの中でプロトコル――プログラムが主役になるのです。

※「Peer-to-Peer」の略称。端末同士がサーバーを介さずに直接通信をしてファイルデータを共有する技術

キラーワード2:DAO

もう一つのキラーワードはDAO、いわゆる「自律分散型組織」だ。DAOはWeb3によって可能になる組織形態であり、個人と個人をつなげる新しいコラボレーションの形として注目されている。

佐々木:従来の株式会社ではユーザーと企業、投資家の利害関係がそれぞれ異なっていましたが、DAOは「コモンズの立ち上げ」という利害関係の一致が発生すると思います。これは非常に重要な考え方ですよね。

矢野:スライドの左側にあるのがいわゆるスタートアップの成長の仕方ですが、これまでは課題解決や企業の成長、投資家へのリターンがバラバラに伸びていく形でした。一方Web3の世界では投資家、企業、個人が全て「一参加者」として経済を回していくことになり、より共通資産のような形になるかなと。
これまでの会社は経営者やファウンダーが運営していたところ、例えば参加者が1万人いるDAOなら、1万人全員がオーナーになるのが理想であり、可能です。多人数がオーナーシップを持ち意思決定をしていく仕組みが成熟化していけば、ここで提示している「コモンズ」に近付いていくはずです。

キラーワード3:Protocol

最後のキラーワードがProtocolだ。すでにWeb3のワード解説の中でも「プロトコルが主役になる」と説明していただいているが、矢野氏は具体的にどのような考えを持っているのだろうか。

矢野:プロトコルは単純に言えば、コンピューターのソフトウェアプログラムのことです。Web3の世界ではソフトウェアプログラムがトラスト(信頼)の中心になります。
例えば信頼についてスライドの一番左が示しているのは、いわゆる「ガバメントのお墨付き」です。「偉い人や機関が言った」という事実がトラストになります。少し前は、AirbnbやUberの評価などがトラストになっていました。
それがWeb3では、「どれぐらい信用できるプロトコルなのか」が問われるようになります。プロトコルの中でどのようにトークンやトークン経済を運用できるかが信頼になっていく感じですね。自動化されたプログラム自体が組織運営や金融取引に関わることになります。

キラーワードを理解した後にやるべき3つのこと

キラーワードを理解した上で、Web3を実際のビジネスに活用するためにはどのような動きが必要になるのか、大きく3つに分けた。

佐々木:今まではマーケットに対して商品を作って営業、マーケティングをしていくという要素が強かったのですが、これからはもう少し「個」が強くなっていくと考えられます。その中で優秀な人材をどう使ってコラボレーションしていくのかが、ビジネスのヒントになりそうです。

DAO×Web3まとめ

今回のウェビナーのポイントを「5つの変革ステップ」としてまとめると以下のようになる。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。DAO×Web3にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
DAO×Web3 ―エストニアでブロックチェーン事業等4社起業した矢野氏が語る、ポストGAFAMに迫る新規事業とは―
本ホワイトペーパーは、2022年7月26日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。Web3、メタバース、NFT、DAO等の海外トレンドをいち早く自社に取り入れたい皆様に向けて、世界のテクノロジー時流とWeb3に適応するために知っておくべきポイントをご紹介しております。