プロシェアリングコンサルティング > マガジン > 働き方改革・テレワーク > 【イベントレポート】世界最先端の営業組織の作り方 ―成果を出す営業を輩出し続ける組織へ、今導入すべきセールスイネーブルメントとは?―

【イベントレポート】世界最先端の営業組織の作り方 ―成果を出す営業を輩出し続ける組織へ、今導入すべきセールスイネーブルメントとは?―

営業組織強化

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2022/05/24回では、営業メンバーの能力差が縮まらずエースに頼りがちになっていて組織全体の営業力が上がらないとお悩みの皆様に向けて、日本におけるセールスイネーブルメント分野の第一人者である 山下氏に、セールスイネーブルメント構築の5つのステップについて語っていただきました。
「セールスイネーブルメントを始めたいが何から手をつけたら良いか分からない」
「新規商材/サービスを展開しているが、従来通りの営業方法から脱せず営業成果が上がらない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

山下 貴宏氏

山下 貴宏氏

株式会社R-Square & Company代表取締役社長/共同創業者
大学卒業後、日本ヒューレット・ パッカードにて法人営業。船井総合研究所、マーサージャパンを経て人事制度設計、組織人材開発のコンサルティングに従事。その後、セールスフォース・ドットコムにてセールス・イネーブルメント本部長。グローバルトップの営業生産性を実現。 2019年、セールス・イネーブルメント特化企業R-Square & Companyを設立。イネーブルメント分野の日本での第一人者として講演実績多数。

樋口 達也氏

樋口 達也

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2022/05/24時点のものになります。

効果検証なきOJTだけでは効率的な人材育成は難しい

ビジネスパーソンが抱える営業課題は多い。例えば新規顧客の開拓や既存顧客の売上拡大、営業担当者個人のスキル向上、ナレッジ活用やツールを使った分析など、営業マンは「やるべきことが山積み」の状態だ。さらにコロナ禍によって新規事業・サービスの展開が活発化し、営業担当者一人ひとりの動きがより大きな意味を持つようになった。
そこで重要なのが人材育成だ。日本企業を見てみると、8割の企業がOJT施策を行っているというデータがある。

実践重視の人材育成が主流となっている一方、育成の効果検証を行っている企業はわずか3割以下にとどまる。つまり、トレーニング自体が目的化しているケースが非常に多いのだ。またOJTは実践からスキルを学べる利点がある一方、指導者の指導方法や取り組む内容にバラつきが生まれやすいデメリットもある。
現在の人材育成の手法のみでは、営業の属人化、ひいては営業マンやマネジャーの負担増が加速していく可能性は高いといえる。

今注目されるセールスイネーブルメントとは?

変化する時代の中でより効率的・効果的に営業人材を育成するには、仕組み化が欠かせない。そこで現在注目されているのが、セールスイネーブルメントだ。

セールスイネーブルメントの一番の肝は「成果起点の人材育成」

セールスイネーブルメントとは端的に言えば、人の成長を通じた持続的な営業成果創出の仕組みのことだ。以下の概念図が示す通りセールスイネーブルメント領域にはさまざまな要素があるが、「成果起点の営業人材育成」ともいわれるように、特に重要なのは育成部分なのだ。

『世界最先端の営業組織の作り方』の著者でセールスイネーブルメント分野の第一人者でもある山下氏は、セールスイネーブルメントについて「最終的に人の動きを変え、営業の成果を最大化する流れが最も重要」としている。
単なる研修プログラムではなく、「人の動きを変える仕組み」という観点で、セールスイネーブルメントを捉えるべきだという。

セールスイネーブルメントを行う上で重要な2つのポイント

欧米ではセールスイネーブルメントを導入する企業が増加しており、イネーブルメント専門組織を持つ企業は営業予算達成率や成約率に顕著な成果が見られるという。ではセールスイネーブルメントを行う上ではどのようなポイントがあるのか、重要な2点を教えていただいた。

[point.1]イネーブルメントを行う目的が明確である

最初に押さえておきたいのが、そもそも何のためにイネーブルメントを行うのかという点だ。「何のために育成を行うのか」と言い変えてもいい。

山下:育成は目的を達成するための手段でしかありませんから、まずは営業組織がどういった成果を求めているのかという点からスタートすべきです。そのために必要な行動は何なのか、行動を取るために必要な知識やスキルはなんなのか。ここを連鎖させるのが非常に重要です。
当然のことではありつつも、これらをきちんとつなげて設計している企業は非常に少ないです。

[point.2]イネーブルメントを組織的な取り組みにする

イネーブルメントが組織の「仕組み」そのものだと考えると、重要なのは継続的に取り組むことだ。オーナー、イネーブルメントチーム、オペレーションの3要素が、イネーブルメントを組織的な取り組みにするために欠かせない存在になるという。

山下:イネーブルメントは単なるトレーニングではなく、営業が成果を出していくにあたって取り組むべき一つの重要な柱です。最終的に営業成果の責任を負うのは営業役員や企業のトップの方々なので、「イネーブルメントと営業メンバーを支援し、成果を最大化していく」という意思表示をするのが非常に重要です。

その上で専任のイネーブルメントチームを組成し、育成オペレーションを回していく。このサイクルがきちんと機能しているかどうかがポイントだ。

“世界最先端の営業組織”へ、セールスイネーブルメントの構築方法

イネーブルメントに関する最重要ポイントがわかったところで、ここからはイネーブルメントを構築する方法について、実際の事例も交えながら具体的に教えていただいた。

大手企業におけるセールスイネーブルメントの実践事例

まずは実践事例として、売上規模1兆円、従業員5万人以上の大手企業の取り組みついてご紹介する。

山下:この企業は中期経営計画において、新たな柱となるDX関連事業を30%伸ばす目標がありました。ところが実態を見ると、営業の方々個人の動きに成果が依存してしまっていた。そこできちんと仕組みをつくり、営業を標準化していきたかったというのが導入の背景です。

イネーブルメントを事業部単位で導入した結果、育成プログラムが仕組みとして機能するようになったという。また営業の質も一定の向上が見られ、新規案件数が増加するなど着実な育成成果が出ている事例だといえる。

セールスイネーブルメント構築の5つのステップ

イネーブルメントの導入から成功に至るまでのプロセスは、大きく5つのステップに分けられる。データ収集と整備、人材のアサイン、プログラム開発と提供、データの蓄積と検証、レビューサイクル。それぞれをどのように進めていけばいいのか、詳しく伺った。

[step.1]データ収集と整備

最初のステップは、データ収集と整備だ。顧客の意思決定プロセスに従い、実際に以下のような形で営業フェーズを再定義したという。

山下:いわゆるSFAを用いた営業活動管理を思い浮かべていただけると良いかと思います。日々の営業の進捗を可視化し、活動管理を行えるようにするのがこのステップの主旨です。案件数が少ない、案件の金額が足りない、日数が長い、受注率が低いといった要素が見えてくると、目標とする指標に対してどんなイネーブルメント施策を打てばいいのかがわかります。

樋口:数値を俯瞰していくということですね。

[step.2]兼任or専任人材のアサイン

樋口:ステップ2が人材のアサインですが、ここは悩まれる企業が多そうです。

山下:経営陣がイネーブルメントは良さそうだと思っても、一気に本格導入に踏み切る流れにはなる例は稀です。その場合、最初はプロジェクトベースで営業企画や経営企画の方々に入っていただき、スモールスタートで型と作ります。成果が出てオペレーションとしても回りそうだということがわかったら、本格的に人をアサインするケースが多いですね。

樋口:プロジェクトなら期間も限定的ですし、山下さんのようなプロ人材に入っていただく形もありえますね。その後本格的に内製化していくステップを取るのが良さそうです。

[step.3]プログラムの開発と提供

樋口:ステップ3では営業のTOBEモデル作成、育成テーマの把握、イネーブルメントプログラムの提供、そして成果の検証を行うと伺っています。ステップ1、2を通してどこが営業のボトルネックになるのかを発見し、プランに落とし込むイメージですか?

山下:そうですね。ポイントは、営業の方々に期待するスキル体系の言語化です。「自分たちにこういうスキルや知識が必要だから、こういうトレーニングやコンテンツがある」という形にしましょう。ここまでできれば、目指すべき姿をいつでも振り返れますし、単発のトレーニングで終わることもありません。

樋口:マネージャーの方も「これを目指してほしい」と言えるので、メンバーとのコミュニケーションが楽になりそうですね。

山下:もう一つのポイントは、「明日から使える実務的なコンテンツ」を作ることです。営業の方々がほしいのは、すぐに使える武器ですからね。

[step.4]イネーブルメントデータの蓄積と営業成果との検証

続いてのステップは効果検証だ。冒頭でご紹介したように、現状の主流であるOJTでは効果検証があまり行われておらず、この点でイネーブルメントは大きく異なる。またここでいう効果検証は、いわゆるトレーニングのサーベイ結果とも違うという。

山下:トレーニングに何人参加したといったことを知りたいわけではありません。見るべき指標はイネーブルメント施策がビジネスの成果につながったのか、そして人の育成ができたのかどうかです。
新規開拓がテーマであれば新規開拓の件数や売上の増減を見ればいいわけですし、育成に関しては知識やスキルのスコアが伸びたかを見ましょう。これで効果は十分に検証できます。

[step.5]経営層とのイネーブルメント結果レビューサイクルの確立

樋口:そして最後がレビューサイクルの確立ですね。これは決裁者クラスの方も交えたレビューを行うのでしょうか?

山下:基本的に営業のマネジメント層の方々によるレビューですね。例えば今期に全体で何をやるのか合意を取りつつ、進捗状況の把握や軌道修正などを営業のトップとマネージャー陣が都度連携しながら擦り合わせるのがサイクルとして重要です。
定量面のレビューだけでなく、テーマごとにアウトプットを共有し、「A社にこんな提案をしたら上手くいった」といった定性面からも効果を確認するのが良いかと思います。

樋口:このサイクルが正しく回れば、ナレッジシェアもしやすそうですね。

企業規模別イネーブルメント進捗マップ

最後にご紹介するのが、企業規模別のイネーブルメント進捗マップだ。ベンチャー、中堅、大手、グローバル企業ごとに、ここまでにご紹介した5つのステップで実行すべき内容は変わってくる。

山下:ベンチャー企業ならステップ1でSFAを有効活用し、商談の確認やコーチングを行うだけでも十分です。逆に大手企業はSFAだけでは不十分なので、一つずつ育成のオペレーションを作るやり方がおすすめです。

世界最先端の営業組織の作り方まとめ

今回のウェビナーのポイントを「すぐに取り組んでいただきたいこと」として以下のようにまとめた。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。世界最先端の営業組織の作り方にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
世界最先端の営業組織の作り方 ―成果を出す営業を輩出し続ける組織へ、今導入すべきセールスイネーブルメントとは?―
本ホワイトペーパーは、2022年5月24日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。組織全体の営業力が上がらないとお悩みの皆様に向けて、組織の営業力を底上げする手法として新たに注目を集めているセールスイネーブルメントの構築方法を5つのステップに分けてご紹介しています。