【イベントレポート】成功するデータドリブン経営 ―経営者のための意思決定を早めるデータ基盤作りの事例と4つのステップとは?―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/05/17回では、経営視点でのデータ活用に課題を抱える皆様に向けて、データドリブン経営のプロ 吉本氏に
経営者のための意思決定を早めるデータ基盤作りの4ステップをご紹介いただきました。
「導入した様々なツールなどにデータが溜まっているが、どうビジネスの意思決定に活かせるのかわからない」
「データドリブン経営を進めていて、より大規模に、スピーディーに推進をしたいが推進する人材がいない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
吉本 圭氏
カグリーグループ Glossom株式会社 執行役員
フューチャーシステムコンサルティング株式会社を経て、2011年グリー株式会社に入社し、大規模インターネットサービスのインフラおよび事業企画・事業戦略でプロジェクトリード。2015年ランサーズ株式会社に入社後は、データ&マーケティング事業QUANTを立ち上げ、後に子会社化しスタートアップでの事業立ち上げ〜買収を経験。売却・買収に伴い、2019年1月グリーグループGlossom株式会社執行役員に就任。データ活用・マーケティング支援事業立ち上げ、多数の企業のグロース支援・データ活用支援を牽引。
松井 優作
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部 マネジャー
早稲田大学卒業後、新卒一期生で創業期のサーキュレーションに参画しマネジャー就任。首都圏を中心に自動車や大手製薬メーカーなど製造業50社以上に対し、全社DXの推進・新規事業開発・業務改善・営業部隊の構築・管理部門強化などの幅広い支援実績を持ち、実行段階に悩みを抱える企業の成長を支援中。
酒井 あすか
イベント企画・記事編集
新卒で大手人材紹介会社に入社し、中途採用における両面マッチング型の法人・個人営業、グループ会社・地銀とのアライアンス連携業務に従事。丸の内エリアに本社を構える企業への採用支援、100名単位のグループ会社社員に対して営業企画、地銀への人材紹介事業レクチャーに携わる。サーキュレーションではプロ人材の経験知見のアセスメント業務とオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/05/17時点のものになります。
Contents
データドリブン経営のメリットに対して実際の活用は停滞気味
テクノロジーの進化により、現在は世の中に蓄積されるデータ量が増加の一途を辿っている。2010年と比較すると、2020年までに約40倍にもなっているといわれる。
こうした状況の中、企業視点での大きな変化はユーザーに対するタッチポイントが増えたことだ。テレビCMや新聞広告といったいわゆるオールドメディアだけではなく、Webも含めてあらゆる情報が取得できるようになったのだ。企業は多様化するユーザーの行動変化をデータによって見極め、適用することが肝要となる。
一方で、企業におけるデータ活用はまだ十分な域には達していない。データを蓄積はしていても、それをビジネス成果にまでつなげている企業は全体の3分の1程度にとどまる。
成功事例から学ぶ、経営の意思決定を高速化したデータドリブン経営とは?
データ活用の大きな目的の一つが、「意思決定の高速化」による事業スピードや売上の向上だ。しかし現状、多くの企業はデータ収集や加工にばかり時間がかかり、実際の仮説検証サイクルは遅くなっている。これを1日単位にまで短縮し、真のデータドリブン経営を実現するにはどうしたらいいのか。
まずは参考として、講師の吉本氏が手掛けたJALグループの100%子会社、ZIPAIRの成功事例について伺った。
[事例]JALグループZIPAIRの事業を支えるデータ可視化基盤
ZIPAIRは中長距離LCCとして、2020年からタイやホノルルを中心に就航している。吉本氏は同社の設立段階から支援に入り、さまざまなデータの可視化に取り組んでいった。
吉本:エアラインビジネスの一番のポイントは、「どこに飛行機を飛ばすのか」です。その便はどんな顧客層にどれくらいの需要があるのか、競合他社の価格帯はいくらか、機内販売などオプションの収益はどの程度取れるのかといった仮説を立て、データを可視化する必要があります。本事例では、それらのデータを各部署が毎日確認できる環境を提供しました。
立ち上げ当初に提供されたのは、役員・部長向けの「ZIPAIR MANAGEMENT INDEX」と現場向けの「ZIPAIR KPI Dashboard」の2つだ。
松井:もともとは2種類のダッシュボードをメインに活用し、現在はそれをさまざまな機能やレイヤーに分けて展開しているフェーズということですか?
吉本:そうですね。GMOから各マネジメントレイヤー層に対して提供したい速報値のリクエストをいただいたので、それぞれ追加しました。最終的に5つのダッシュボードを提供し、トータルで300ほどのグラフが存在する状況になっています。
松井:当社でもデータ収集・可視化を行っていますが、それをマネジメントサイクルに乗せて日々の意思決定につなげて行動を変えていくのはハードルが高いと感じています。ZIPAIRさんは、早期にデータをモニタリングして意思決定につなげていくようにしたんですね。
吉本:ポイントはトップの方の強いリーダーシップですね。我々は事業とデジタルの橋渡しはできますが、デジタルの組織浸透はリーダーシップの強さが非常に重要です。
データドリブン経営を実践するための4つのステップ
組織の立ち上げ当初からデータの重要性を認識し、活動を進めたZIPAIRの成功事例をご紹介した。一方で、実際にデータドリブン経営を実践する上では多くの課題にも直面する。
そこで次は、データ活用におけるよくある課題とその背景を踏まえた上でデータドリブン経営を進める4ステップについて教えていただいた。
[前提]データ活用で組織が抱える4つの課題
まず、データドリブン経営を目指す際に起こり得る課題は以下の4つだ。
吉本:課題1、2、4では、テクノロジーやデータに振り回されずに本質を考えることが重要です。ゴールがないままツールを導入しても、担当者も方向性が手探りになってしまいます。
松井:課題3は、例えば製造業など機能が多くバリューチェーンごとにデータの持ち方や見ている数字が異なるということですね。このとき、組織全体として全体最適な意思決定ができない状態になりがちです。
[step.1]目的の整理
松井:ではここから、データドリブン経営実践の4つのステップをご紹介していきます。まずは目的の整理がファーストステップになりますが、ここは吉本さんが強く強調されている部分ですね。
吉本:繰り返しになりますが、ゴールなしに何かを始めても迷ってしまいます。まずは目的を明確にしましょう。ツールやシステムありきだと導入がゴールになってしまいがちですが、そうではなくまずは事業計画などに沿って、データで見るべき数値を分解していくことが重要です。事業計画に対して予算や目標があるはずですから、その達成方法から個別のKPIを明確にすれば、見るべきデータも分解できます。
[step.2]KPIの分解
松井:経験がないと難しいのが、次のKPIの分解かと思います。どのようなところに注意すれば良いのでしょうか?
吉本:スライドにはKPIを和・差・積・商で分解すると記載しました。売上を構成するのは例えば顧客数と顧客単価ですよね。そして顧客数を構成するのは新規顧客と継続顧客です。継続顧客は新規顧客の継続率から算出されます。
売上からKPIを分解したら、マーケティングなら新規獲得、カスタマーリレーションなら継続率など、部署によってどんな数字を追うべきかが決まってきます。事業計画の数値を分解し、部署で追うべきKPIに落とし込む。ここを連動させましょう。
[step.3]データ統合
見るべき数値をKPIとして分解した後は、データ統合が必要になる。購買や製造、出荷、販売など複数のデータソースをデータ基盤に統合し、リアルタイムで可視化できるようにするのだ。
松井:このプロセスは人的リソースもコストも時間もかかると感じていますが、やはりボトルネックになる企業は多いのでしょうか?
吉本:多いですね。バリューチェーンごとに担当部署もシステムも異なる場合があるので、大企業ほど進める難易度が高くなります。
松井:ここでキーになるのが、トップのリーダーシップということですね。
吉本:その要素は大きいです。部門横断を横断するなら、トップダウンのほうが進めやすいです。
[step.4]組織浸透
松井:そして最後が、統合したデータを仮説検証のスピードアップにつなげるための組織浸透のプロセスですね。上手く現場のデータリテラシーを上げたり浸透を上手くオンボードさせたりするには、どのような工夫ができるのでしょうか。
吉本:ステップ1、2で目的を整理しKPIを分解した結果、各部署がどういう数値を追いかけるのかが決まりますよね。そこからは部署単位で施策を打ち、結果を確認するサイクルが生まれます。するとデータも更新されることになるので、それを普段の定例で確認するなど、組織の運営サイクルにデータ活用を組み込んでいく必要があります。
成功するデータドリブン経営まとめ
今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。
データドリブン経営の目的には今回ご紹介したほかに「高付加価値」や「新サービスの創出」といったものがあり、今回紹介した意思決定の高速化はそれらの前段階だという。
吉本:素早い仮説検証ができるようになれば、ビジネスを成長させるための勝ち筋が見えてきます。要するにROIの高い部分にコストを投下していくことで、付加価値の高い打ち手ができるようになっていくわけです。それによって顧客像がより明確になれば、新たなサービス展開も可能です。
最終的な顧客像の可視化に向けて、まずは意思決定を高層化するデータ活用基盤を整えることが必要なんです。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。成功するデータドリブン経営にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。