【イベントレポート】成功する中国BtoBマーケティング ―最短2ヶ月で中国企業新規取引先を獲得する方法―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2021年7月6日は、企業の経営者や海外責任者の方に向けて、Webを活用した中国進出成功の秘訣をお伝えいたしました。
今回ご登壇いただいたのは、企業規模を問わず幅広い業種において累計100社以上のサポート実績がある、中国マーケティングのプロ 辻氏。辻氏が実践した中国進出の裏側をご紹介いたします。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
辻 雄多郎氏
中国マーケティング・越境ECのプロ
株式会社船井総合研究所にて日本企業の中国・東南アジア進出サポートに従事。 独立後、中国・東南アジア現地の日本企業、ローカル系企業のコンサルティング、インバウンドマーケティング、現地EC事業拡大、WEBマーケティングサポートを専門として実績・ノウハウを積み上げていく。 中小企業から1,000億円以上の大企業、消費財から工業製品まで、幅広い規模・業種において累計100社以上のサポート実績があり、インバウンド、越境ECのスペシャリストとしてクライアントからも高い評価を得ている。
樋口 達也
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。
花園 絵理香
イベント企画・記事編集
新卒で入社した大手製造メーカーにて秘書業務に従事。その後、医療系人材会社にて両手型の営業を担当し全社MVPを獲得、人事部中途採用に抜擢され母集団形成からクロージング面談まで幅広く実務を経験。サーキュレーションでは、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とビジュアルに強いコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2021/7/6時点のものになります。
Contents
中国市場開拓における日本企業の課題とは?
中国進出を狙う上で障壁となるヒト・モノ・カネ・情報の不足
高度経済成長期が続く中国。現在は国内総生産(GDP)も経済成長率もコロナの影響から回復傾向にあるが、中国という巨大なマーケットへの参入に対して、日本企業の現状としては課題が山積みとなっている。
大きな要因は例えばヒト・モノ・カネ・情報不足や、ノウハウが無いために起こる「何から手をつけたらいいかわからない」という状況だ。また、BtoCマーケットの場合は参入コスト・リスクの高さも課題となる。
すでに中国に拠点を持つ中堅または大手BtoB企業にもいくつか課題はある。現地ローカル企業開拓の難易度の高さや、コロナによる展示会営業の限界。また、新規開拓営業やマーケティング人材不足も深刻だ。
課題脱却の鍵となる手法が中国BtoBオンラインマーケティング
上記のような状況を鑑みて今回のウェビナーで提案したいのが、中国BtoBオンラインマーケティングへの取り組みだ。その理由は以下の3つが挙げられる。
まず、BtoBはBtoCに比べて参入ハードルが低い。また、オンラインマーケティングであれば展示会や代理店に依存した体制からの脱却も図れる上に、日系企業に限って言えば中国市場はほぼブルーオーシャンだ。
この大きなビジネスチャンスを逃さないようにするにはどうしたらいいのか、今回はアジアを中心とした市場で数々の実績を持つ辻氏に伺っていく。
最短2ヶ月で成果を出す中国BtoBマーケティングの立ち上げ方と運用方法
ニッチなジャンルで日系企業として中国ナンバーワンを目指すべき
辻氏はこれまで数々の企業で中国BtoBオンラインマーケティングを手掛けており、例えば年間120万円以下の広告費で問い合わせ480件、あるいは月5万円の広告費で月商3000万円など目覚ましい数字的成果を上げている。そんな辻氏に、成功に至るためステップをロードマップとしてまとめていただいたのが以下のスライドだ。
樋口:1~5年のスパンで書かれていますが、5年でニッチジャンルのナンバーワンまで取れるものなのでしょうか。
辻:5年でというのはかなりチャレンジングな目標ではありますが、少なくとも日系の中で中国ナンバーワンを目指さないと、そもそも中国では競争力を発揮できません。小さなマーケットでもいいので、とにかく一番を目指すためにロードマップを描いて進めることが多いですね。
マーケティングの調査からWebサイトの立ち上げ、運用までの流れ
スピード感を持って中国市場のナンバーワンを目指すための要として、今回は1年目の「立ち上げ」ステージにおけるステップについて詳しく伺った。まずは現状把握と市場調査分析からスタートし、戦略設計、アクションプラン策定、そしてチャネル開発、広告設定までを2ヶ月前後で実施するという。
わずか2ヶ月でここまでの内容をこなすのは難易度が高いように思われるが、辻氏は以下のように述べる。
辻:こだわりを持ってWebサイトを作りたい企業の場合はもう少し時間がかかりますが、1枚ものの単純なLP(ランディングページ)を作成して一気にプロモーションをかけるのであれば、最短2ヶ月で立ち上げ可能です。
また、3つのステップの中で、特にステップ1と2については「簡単に行うだけでいい」という。
辻:BtoB企業の場合は市場調査分析に数ヶ月かけることがあると思いますが、実は市場調査はあまり当てになりません。実際にプロモーションをかけてみたら分析結果と違うということが往々にしてあるので、ある程度あたりをつけたら素早くプロモーションすることに注力します。
中国BtoBマーケティングにおいて最低限おさえるべきチャネル
次に教えていただいたのが、BtoBマーケティングでおさえるべきチャネルについてだ。アリババやWeChatに関しては日本でも知名度が高く、耳にしたことがある方も多いだろう。
樋口:日本でいうAmazonが京東(ジンドン)だと思うのですが、百度(Baidu)は日本でいうGoogleのような存在なのでしょうか?
辻:そうですね、日本でいうところのGoogleやYahooが百度です。中国本土の方々は何か情報を検索するときは百度を使うので、対策が必要です。
アリババには「alibaba.com」と「1688.com」の2つのサイトが存在し混同しやすいが、前者は中国国外(グローバル)向け、後者は中国国内向けのBtoBプラットフォームだ。1688.comのシェアは国内ナンバーワンを誇り、「商材によってはこのモールに出店して引き合いを取る必要がある」と辻氏。さらにWeChatの活用については、中国特有の文化が関係しているという。
樋口:WeChatは日本でいうLINEのような存在ですよね。
辻:日本だとお問い合わせというとメールや電話ですが、中国はチャットでやり取りをします。サイト内にチャットツールを入れられればベストですが、WeChatは顧客名簿獲得のツールとしても必須になるでしょう。
樋口:すでに京東に出店している企業もいると思うのですが、その場合もこれら3つのチャネル活用を考え直したほうがいいんですか?
辻:京東やアリババが運営しているTモールなどのチャネルは、BtoCがメインです。世界一と言ってもいいほど競争の激しいマーケットなので、BtoB企業については今回ご紹介した3つのチャネルを検討されてもいいのかなと思います。
中国BtoBマーケティング立ち上げを成功させる6つのポイント
BtoBマーケティング立ち上げのおおよその流れがわかったところで、次は具体的にどのようなポイントを押さえながら立ち上げ設計をすべきなのかを6つ教えていただいた。
それぞれの要素をまとめると以下の通りになるが、この中でも特に企業が迷うであろう「何を販売するのか」の部分について、詳細をご紹介する。
まず失敗しやすいのは、全ての商品を販売してしまうケースだという。逆に成功するのは、スター商品候補を事前調査の上1~3商品に絞るケースだというが、これはどういうことなのか。
辻:中国国内の検索エンジン、百度の検索キーワードのボリュームを調べると、簡単に事前調査できます。あとはアリババのモール内で商材を検索し、どういうスペックの商材がいくらで売られているのか、自社が勝てそうな商品はなんなのか、当たりをつけていきます。
その上で全ての商品を掲載し、プロモーションをかけても構わないのですが、やはりコスパが悪くなるので、ある程度商品・ジャンルを絞ってヒト・モノ・カネを集中させましょう。駄目なら変えていくといった形で、PDCAを回したほうが上手くいきます。
中国の事情から見える「やるべきこと、やってはいけないこと」
最後にご紹介したのが、中国BtoBマーケティングでやるべきこと・やってはいけないことだ。ここでもやはり、中国特有の事情に合わせるべき点が多々見えてくる。
【やるべきこと】事前調査と適切なサーバー・ドメイン選定、チャットツール導入
辻氏が挙げたやるべきことの3点は、「簡単でもいいので事前調査はしよう」「中国で表示されるサーバー、ドメインを使おう」そして「チャットツールは導入しよう」という内容だ。
事前調査によって中国国内で売れる商品が何なのかを見極めること、そして中国の消費者ニーズに合わせてチャットツールを導入すべきなのは、前述にもあった通りだ。
もう一つ、「中国で表示されるサーバー、ドメインを使う」という点についてありがちな事例として、辻氏は「日本の既存のサイトのドメインにそのまま中国語のサイトを作ってしまうケース」を挙げる。
辻:サブドメインのような形で中国語サイトを作った結果、中国国内でそれが表示されない、あるいは表示速度が極端に遅くなってしまう企業が散見されます。これは制作会社にノウハウがないとどうしようもありませんし、私へのご相談でも多い内容です。
まずは事前にどこにサーバーを設けるのか決めましょう。例えばソフトバンクが運営する中華系のサーバークラウドであるAlibaba Cloud(アリババクラウド)や、香港のサーバーを用いてドメインを作成することで、サイトが表示されないリスクは排除できます。
【やってはいけないこと】レスポンスの遅延は中国ECでは致命的
次に辻氏はやってはいけないこととして、「現地社員、広告代理店、制作会社に丸投げ」「中国ローカルのニーズと乖離した商品・サービスを売る」そして「初回問い合わせ対応、やりとりのレスポンスが遅い」の3つを挙げた。
丸投げが推奨できないのは、先ほどのようなサーバー問題の発生や、サイト翻訳が意図通りにならないといったマイナスの可能性があるからだ。「ある程度は企業でディレクションが必要です。プロモーションについても、内製化したほうがランニングコストも安く済む」と辻氏は述べる。
「中国ローカルニーズと乖離した商品・サービスを売る」は、事前調査の必要性とも重複する。自社商品のスペックや価格が中国市場にマッチしているかは、商品展開をする上で最重要と言ってもいいだろう。過剰スペックでないかどうかもポイントになるという。
最後の「初回問い合わせ対応、やりとりのレスポンスが遅い」ことがマイナス要素であることは容易に想像がつくが、辻氏は特に中国は「秒で返事を返さないとすぐに離脱してしまう」と言及する。
辻:チャットを導入したらすぐに返信できるような体制にしておかないと、BtoBでもBtoCでも大変だと思います。初回のレスポンスが悪いとすぐに逃げてしまうので、「3日以内に回答する」という返答だけでも中国語で一旦返信できるようにすると、結果が変わると思います。
樋口:そこまでのスピード感が求められるということなんですね。
成功する中国BtoB市場開拓まとめ
今回のウェビナーのポイントを、「本日お伝えしたかったこと」として以下の3点にまとめた。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。中国BtoB市場開拓にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。