新規事業の資金調達における「助成金」の位置づけ〜融資、補助金、アクセラレータープログラムとの違いとは?〜
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新規事業に対する、融資・助成金・補助金・アクセレータープログラムの違いとは?
新規事業立ち上げ際に資金を調達するには、主に「融資」「助成金」「補助金」そして「アクセレータープログラム」の4つの資金調達方法があります。
融資とは?
創業融資には、「銀行」と「公的資金」の2種類があります。
銀行融資は既存事業の収益性にこだわるのに対し、公的資金の場合には経営経験が有利に働くケースがみられます。一般的に創業融資は金利が低く設定されており、1~2%前後の低金利で借り入れをすることが可能です。
既に事業を手掛けている企業が、新規事業を立ち上げる際に融資を受ける場合、注意したいのが「既存事業からの独立性」です。創業融資は、先ほどご紹介したように金利が低く設定されています。そのため、既存事業と新規事業が財務的に独立しており、キャッシュフローがしっかりとわかれていないと、例えば既存事業が赤字であった場合、その赤字の補填のために資金が流用されてしまうと考えられてしまいます。
日本政策金融公庫について
日本政策金融公庫は、日本政府が100%出資を行っており、「セーフティネット機能の発揮」「日本経済成長」「地域活性化への貢献」に力を入れています。経営目標に「日本経済成長」を掲げており、創業融資を積極的に行っている金融機関です。
参考:日本政策金融公庫:サービスのご案内:日本公庫を初めてご利用の方へ
日本政策金融公庫の創業者向けの貸付には、「新創業融資制度」があります。無担保・無保証人であっても、3,000万円(うち運転資金1,500万円)を、1~2%前後の低金利で借り入れることが可能です。
助成金・補助金とは?
助成金・補助金は、特定の条件を満たすと政府や自治体から受け取れる資金で、融資のように返済の義務がありません。
補助金は、少子高齢化問題、環境問題、地方都市問題などの問題を解決するため、起業促進、地域活性化、女性若者の活躍支援といった活動を行っている人や企業に対して給付されるものが多くあります。これは経済産業省で実施されており、法人税が財源です。
これに対して助成金は「雇用」に関する給付金で、厚生労働省で実施されており、雇用保険料を財源としています。
厚生労働省・経済産業省以外にも、地方自治体やNPO法人が給付している助成金・補助金もあります。
助成金は要件等が合うと受給することができる可能性が高いのですが、補助金は上限が決められており、申請しても受給できないケースも珍しくありません。また、助成金の申請期間は通年もしくは長期間ですが、補助金の多くは申請期間が短く1ヶ月程度しかないこともあります。
参考:創業手帳:資金繰り:補助金/助成金を活用しよう。起業家が選べる4種類をご紹介!
アクセレータープログラムとは?
大手企業や自治体がベンチャー、スタートアップ企業などの新興企業に出資や支援を行うことにより、事業共創を目指すプログラムです。3ヶ月などの決められた期間に企業や自治体から経営ノウハウの指導を受けた後、最終プレゼンを行い新たな出資を得てプログラムを卒業となるのが一般的です。
流行りのオープンイノベーションにのることで、創業資金を調達するだけではなく、ビジネスに関するノウハウを得ることができ、更に話題を集めサービスやブランドの認知度を高めることも可能です。
また、プログラムによっては融資を受けることができるだけではなく、出資を受けることができるものや、企業との事業連携が受けられるものもあります。そのためアクセレータープログラムは、創業に関するノウハウがなく、資金調達が厳しいスタートアップ企業を中心に注目を集めています。
注意したいのが、アクセレータープログラムに参加するだけで、融資・出資を受けることができるわけではない点です。融資や出資を受けるためには、審査を通過する必要があります。
助成金のメリットとデメリット
助成金を受給するメリットとデメリットをご紹介します。
助成金のメリット
先ほどご紹介したように、助成金は返済が不要です。その上目的に沿っていれば使い道を規定されていないので、設備投資や社員インセンティブ、人材開発等、自由に使うことができます。また助成金を受給しているということは、労務環境を整えている企業であることを意味するため、企業の信頼度という観点においてプラスに働きます。
助成金のデメリット
助成金は、申請に専門的な知識を必要とし、給付までに時間がかかるケースも多くあります。また、申請期限が厳格に定められているため、これを過ぎてしまうと受給できなくなります。そして新しい制度を導入した場合、簡単に廃止することができないのもデメリットのひとつといえます。
創業融資で助成金を申請する際に知っておきたいこと
助成金を申請するためには、一定の条件を満たし、書類を提出する必要があります。
助成金申請の条件
助成金申請には、以下のような条件が決められています。助成金によって条件が異なりますので、募集要項を必ずよく読みましょう。
- 雇用保険が適用されている事業所の事業主であること
※過去2年間、労災保険料・雇用保険料を滞納していないこと
滞納している場合には、支給申請日の翌日から2カ月以内に滞納分を清算しましょう
- 審査に協力すること
- 申請期間中に申請を行うこと
- 暴力団と関わりがないこと
助成金を申請する際のフロー
東京都中小企業振興公社の創業助成金では、申請後から助成金の支払いまで上記のフローで進みます。助成金によっては、面接審査がないケースもあります。フローについては、各助成金の申請書類に記載されていますので、しっかりと確認しましょう。
助成金申請の必要書類
東京都中小企業振興公社の創業助成金では、以下の書類を申請書提出時に一緒に提出します。助成金申請では、一定の条件を満たした上でこれらの書類を申請時に用意し、申請期限内に申請をする必要があります。また、申請する助成金によって、追加で提出書類が必要になりますので、申請書類提出前に、「給付を受けるまでにどんな書類が必要になるのか」確認をしておきましょう。
- 説明資料
- 会社概要
- 確定申告書
- 登記簿抄本/開業届
- 本人確認所
- 申請要件確認書類
- 返信用封筒
助成金を利用する際の注意点
助成金は、申請が終わったら必ず給付されるわけではありません。助成金を利用する際には、以下の点に注意しましょう。
計画に沿って正しく利用する
助成金は、当初の計画に沿って正しく利用することが求められます。当初の計画以外でお金を使ってしまうと、助成金を受給することができなくなってしまいます。
資金用途に注意する
資金の用途は必ず記録し、記録をしっかりと残して保管しておきましょう。また、助成金の条件を確認し、目的外のことに資金を使用しないように注意しましょう。申請書類で資金計画を立てる前に、不明点は必ず事務局に問い合わせをし、用途を正しく理解することが重要です。
実態と異なる書類を作成しない
助成金の不正受給は犯罪行為です。存在しなかった書類を制作したり、実態と異なる内容の書類を作成して助成金を申請し、給付を受けるのは不正受給で、詐欺罪にあたります。もし助成金を不正受給した場合、助成金の返還や、雇用関係助成金の3年間の支給停止の措置だけではなく、場合によっては刑事告発の対象になってしまいます。
各都道府県にある「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」では、受給申請の相談を無料で受け付けていますので、手続きや必要書類などで分からないことがあったら相談をしてみましょう。
新規事業立ち上げで利用することができる助成金
新規事業立ち上げで利用することができる助成金をご紹介します。ご紹介した以外にも、労働関係の助成金や地方自治体の助成金などがあります。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の企業内部におけるキャリアアップを目標にしており、正社員化や処遇改善の取り組みに対して助成されます。正社員化コースでは、有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換したり直接雇用した場合に受給することができます。この場合の正社員とは、勤務地限定正社員や職務限定正社員、そして短時間正社員を含みます。また、母子家庭や父子家庭の母または父を転換した場合や、派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用した場合になどには、助成金が加算されます。
注意したいのが、助成金制度は、要件等が変更になる場合があることです。取組を実施する前に、最新の要件を管轄の労働局またはハローワークへお問い合わせて確認しましょう。
参考:厚生労働省 都道府県労働局 ハローワーク:キャリアアップ助成金のご案内
両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)
政府は、女性の社会進出を積極的にバックアップしており、その一環として女性が活躍しやすい職場環境を整備し目標を達成した企業に対して助成金を支給しています。自社の女性従業員の活躍に関する「数値目標」を設定し、それを達成するために取組内容(「取組目標」)等を盛り込んだ行動計画を策定します。そして行動計画に沿った取り組みを実施し、「取組目標」を達成した事業主と「数値目標」を達成した事業主が助成金を受けることができます。女性活躍加速化コースは、「加速化Aコース」と「加速化Nコース」の2つに分かれています。
加速化Aコース
支給対象 | 業種関係なく常時雇用する労働者が300人以下の事業者が対象 |
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受給回数 | 1企業につき1回 |
支給条件 | 「取組目標」を達成した場合に支給 |
加速化Nコース
支給対象 |
常用労働者数301人以上の企業であっても、女性管理職比率が基準値以上に上昇した場合支給対象になります |
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受給回数 | 1企業につき1回 |
支給条件 | 取組目標を達成した上で、数値目標を達成した場合に支給 |
参考:厚生労働省 都道府県労働局:両立支援等助成金 女性活躍加速化コース支給申請の手引き
おわりに
新規事業立ち上げ時には、ビジネスを円滑に進めるためにも資金調達が必要不可欠です。融資や補助金そしてアクセレータープログラムだけではなく、返還不要で無利子の助成金を賢く活用して、資金調達に役立てましょう。