現在、日本を代表するSaaSサービスを展開しているSansan株式会社にて事業部地域統括を勤めている中村成寿氏に、ご経験談に基づく組織の作り方とこれからのワークスタイルにおける『コンダクター』必要性についてお話を伺いました。
お話を伺った方:中村成寿氏
Sansan株式会社 Sansan事業部 地域統括。福岡県出身。新卒で人材紹介会社に入社し、中小企業を中心に約1000社の新卒、中途採用支援を実施。2008年、営業第1号としてSansanに入社。クラウド名刺管理サービスという新しい市場の創出に従事する。2015年1月、大手領域の営業責任者として、大手企業へのSansan導入を促進する。2016年12月福岡支店長、2017年9月西日本統括を歴任。2017年12月より現職となり、Sansan事業部の全地方拠点を統括。自身もプレイヤーとして活躍する傍ら、更に強力な組織を育成するため、新人教育にも注力。Sansanの営業部門全体を牽引する存在として手腕を振るっている。
Contents
『自走する組織作り』に必要なものとは?
大手には魅力を感じなかった新卒時代
新卒時代から大手よりもベンチャーの方が挑戦できる土壌があると感じていたこともあり、仕事相手もベンチャーが多く、Sansanに入社するまでは大手の人と接する機会はそれほどありませんでした。
そんな中でSansanの幹部は大手出身者ばかりでしたが、話してみた時に心を動かされるものを感じました。その時、この人たちが名刺一本で勝負しようとしているのだから‟何か”あるんだろうと思いました。
このサービスを売るのは難しいと思った入社時
入社の頃は社名がまだ三三株式会社の時でした。由来は6人の知り合いを介したら世界中の人々と知り合いになれる『六次の隔たり』をSansanのサービスで「社内人材をシェアして3人に」だったのですが、サービス内容も名刺を管理するツールってこともあって、とにかく日本っぽくて、正直、第一印象ではそれほどインパクトを感じたわけではありませんでした。
元々は人材系の会社でコストカットや収益の上がるシナリオをデータを基に営業する環境にいたのですが、Sansanのサービスは複雑で費用対効果を示すのが難しい気がしました。
そこで、入社時の面接で「費用対効果をどう示すんですか?」と聞いたのですが、「示せない」と返ってきたのでこれは売るのが難しいだろうと思いましたが、逆に「これを売ることができたら何でも売ることができる」と思い、Sansanへの入社を決めました。
Sansanのサービスは現在7000社が導入。トップセールスになるまで
元々、Sansanではウェブやセミナーでの問い合わせを受けてから対応するというインサイドセールスを中心としていました。しかし、それだけでは導入企業者数はあまり増えないと考え、ターゲットを絞って営業するアカウント営業部を当時4人で立ち上げました。
今思うと入社時には導入企業100社に満たず、この2~3年が一番頑張っていたと思います。
Sansanの導入企業を業種別で見ると、不動産・建設会社の導入数が多いのですが、不動産はアカウント営業部の時代にほとんどやりました。
最初の方は名刺管理にそこまで大きなお金を払う必要がないと考えているお客様が多かったですし、費用対効果を示すのも難しかったため、まずは試しに使っていただくことに注力しました。そしてプロダクト改善をしながらお客さんに長く使ってもらうことを念頭にお客さんについてきていただき、気付いたら導入企業者数は7000社になっていました。
これからの支店の方針 自走する組織を作る
メンバーにはつい細かく口を出したくなりますが、そこはぐっとこらえて、所属メンバーが自分で考えて形にしていく組織にしたいと思っています。そのためには『一人ひとりのオーナーシップ』が必要になると思います。
オーナーシップとは自身が責任感を持って仕事に取り組んでいくことですが、自分の頃とは環境に違いがあることに注意する必要があります。
自分の入社した頃は良くも悪くも常に新しい壁に当たっていたので、否が応でも自分で乗り越える必要があったのですが、現在の社員がぶつかる壁は既に誰かが乗り越えた壁が多く、そういう意味ではオーナーシップを持ってやるのは以前より難易度は高いのではないかと思っています。
社員一人ひとりがオーナーシップを持つためには
今年の5月、6月から実施しているのは支店ごとにビジョンを作ることです。いつまでにどの形にしたいのかをビジョン、バリュー、メソッド、メジャー、リスクに5つに分けて体系的に考えてもらっています。
ポイントとしては地域統括の自分が判断することが前提になっていたものを、社員自身にビジョンに照らし合わせて自分で判断してもらっています。それにより業務に対してオーナーシップを持たせ、業務が会社全体で見た時に合致しているかを社員が自律して考える風土を作っています。これには今までにないかなりの手ごたえを感じています。
これからのワークスタイルには『コンダクター』が必要不可欠
コンダクターの存在とは?
一人ひとりがプロフェッショナルとして、自分の持ち場を守るのは必須ですが、個人のできることには限界があります
バスケットボールで3ptシュートを打てる人を集めるだけでは勝てないように、これからの時代は個々の人を配置し活かすコンダクターの存在が重要になってくると考えています。
最適なコンダクターの選び方とは?
基本的な業務をこなして段階的に管理職になる形は一般的ですが、プレイヤーとして優秀だからと言って良い管理者になるとは限りません。
コンダクターとなるには会社の向かう方向とその人自身の考え方の方向性がマッチしており、会社を等身大で語れる人が重要だと思います。
そのためには新卒採用などの初期の段階から、企業理念への理解を深めた上で会社としてどうあるべきかを判断する力を養う必要があり、一方で状況に応じた柔軟に方向を修正・管理するような思考もまた必要なのかもしれません。
取材・記事作成:金丸 嵩