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【イベントレポート】クリエイティブ経営2023―クリエイティブ・ディレクター北尾昌大に聞く、経営変革のためのクリエイティブの必要性―

中期経営計画策定

23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。

2023/01/25回では、企業の経営者・経営企画室長・デザイン/クリエイティブ統括責任者に向けて、クリエイティブが持つ役割と経営との関連性についてクリエイティブ・ディレクターとして650本以上のTVCMに携わった北尾 昌大氏に語っていただきました。
「クリエイティブが重要なことは理解しているが、自社としてどのように取り込んでいくかビジョンが見えない」
「クリエイティブと言われると広告やマーケティングが浮かび、経営戦略と掛け合わせるイメージが腹落ちできていない」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。

当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

北尾 昌大氏

北尾 昌大氏

株式会社北尾企画事務所 代表取締役 / Creative Director
クリエイティブ・ディレクターとしてベンチャー企業のブランディングからナショナルクライアントの世界キャンペーンまで150社以上の企業の広告コミュニケーションに従事。650本以上のTVCMを制作。電通、Incubate Fundを経て、独立。2018年英Leeds大学にてMBA取得。ドメインは「ビジネス」x「クリエイティブ」による事業成長支援。企業のクリエイティブ顧問などを歴任。
北尾氏が担当した主なクライアント:任天堂・みずほ銀行・味の素・BizReach/Visional・ラクスル/ノバセル・BASEFOOD・他多数

村田 拓紀氏

村田 拓紀

株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部
FLEXY部マネジャー

中古車のマーケットプレイスシェア首位の企業にて拠点責任者、営業戦略策定、メンバーの採用から育成まで幅広く従事。IT企業を経てサーキュレーションに参画。現在はIT戦略における中期ロードマップ策定、IT企画人材育成に向けた技術顧問活用プロジェクトなどDX推進に舵を切る多くの企業を支援。

板垣 和水

板垣 和水

イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。

※プロフィール情報は2023/01/25時点のものになります。

近年重要度が高まる「ビジネス×クリエイティブ」の動向

昨今、クリエイティブ経営やアート思考、デザイン思考、デザイン経営といったワードがビジネストレンドとなっている。いずれも、クリエイティブ人材が持つ思考法を経営へ活かそうとする動きだが、なぜこのような潮流が生まれているのだろうか。
背景にあるのが、技術のブレイクスルーと第4次産業革命だ。産業を問わず非連続的な技術やビジネスモデルのイノベーションが起こる現代においては、デザインシンキングやクリエイティブを用いたユーザー視点の課題解決が求められる。

実際、米ビジネス誌『フォーチューン』が選ぶ急成長企業100社のうち、14%がCCO・CDOといったデザインエグゼクティブを設定している。ユニコーンスタートアップ企業にフォーカスすると、割合は21%だ。製品・サービス開発のために企業がデザインファームを買収・業務提携をする動きも見られる。

経営者に伝えたい、クリエイティブの役割と重要性

クリエイティブ経営をトレンドワードとして認識はしていても、その重要性は直感的に理解し辛い。そこで今回ご登壇いただいたのが、これまで650本以上のTVCMを制作した実績を持ち、クリエイティブ・ディレクターとして活躍する北尾氏だ。同氏は以下の通り、名だたる企業の経営にクリエイティブで寄与してきた。

今回は、そんな北尾氏が実際に手掛けた事例を通して、クリエイティブの役割と重要性について認識するところからスタートした。

クリエイティブによって課題解決を行った事例

[事例.1]任天堂:男女問わず気軽にゲームを取りやすいイメージを醸成

村田:まずは任天堂さんの課題解決をした事例です。スライドには「男女問わず気軽にゲームを取りやすいイメージを醸成」とありますが、すでにこちらのイメージのほうが強い企業ですよね。これはどんな課題解決だったのでしょうか?

北尾:任天堂さんの商品が優れていた前提はありますが、ニンテンドーDSが登場した当時、ゲームは基本的にオタクや男の子しかやらないものでした。中でも任天堂は、「任天堂ファンと子供しかやらない」という、危機的状況だったんです。
そんな中で発売されたニンテンドーDSだったのですが、アメリカの世界的なゲームショウに出展したところ、女性やお年寄りがニンテンドーDSを楽しんでいる光景がありました。そこで、「5歳から95歳まで遊べるおもちゃ」という定義をしてみようと考えたのです。具体的にはCMで若い女性が気軽にニンテンドーDSを取り出して遊んでいる状況を訴求したり、キャンペーンのロゴをショッキングピンクにしてみたりといった取り組みを実施しました。
次に登場したのがWiiです。今でこそ家族でゲームをするのは当たり前の光景となっていますが、当時はほとんどありえませんでした。その中でどのように購買の意思決定をしてもらおうかと考え、最終的な決定権を持っているであろうお母さんを口説く方向で、「家族でゲームをプレイしている様子」をCMで見せることに。結果的に、今のような任天堂のゲームのイメージを作れたのだと思います。

[事例.2]ビズリーチ:BtoB業界の当たり前を壊すことに成功

村田:もう一つがビズリーチさんの事例ですね。BtoB企業がTVCMを打った事例ということで、スライドには「BtoB業界の当たり前を壊すことに成功」とあります。一体、何がその内容に該当したのでしょうか?

北尾:BtoBの場合、顧客企業にCMを見てもらったからといってそのサービスを導入する流れにはなかなかなりません。しかしビズリーチさんはCMをやってみたいというご要望をお持ちだったので、本当にやるべきかどうかを最初にかなり議論しました。
基本的に業界は大手一強時代でしたから、そこに入り込むためにはTVCMで名前を覚えてもらうしかないという結論に。ビズリーチさんの強みであるダイレクト採用をPRし、さらに企業名も覚えてもらうとなると30秒は尺が必要だと考え、30秒間に企業名を6回出す方法を考え出しました。タクシー広告も打ったのは、恐らくBtoBではビズリーチさんが最初なのではないかと思います。

取り組みの結果、ビズリーチの認知度は拡大。BtoB企業にとってもマス広告が認知拡大の手段の一つになるという認識がかなり広まった。

まとめ

事例を踏まえた上で、そもそもビジネスにおけるクリエイティブの役割や重要性は何なのかをまとめると、以下のようになる。

北尾:基本的に、ほとんどのサービスはコモディティ化しています。さまざまなものが便利になり、「今の生活のままでもいい」と考える人が多い中では、顧客目線に立って求められるものを考える必要があります。
例えばUberなんかは、登場したときは衝撃的だったとしても、後になって考えたら「どうして思いつかなかったんだろう」と思うようなアイデアです。既存のものを少し変える、何かと何かを組み合わせる。こういう視点で物事を考えれば、どんどん新しいイノベーションが起こせるはずです。

経営者はどのようにクリエイティブを経営へ取り込んでいくのか

「クリエイティブを経営に取り込んでいる状態」とは、決して社内にデザイナーを置くことではないと、北尾氏は語る。さらにクリエイティブ経営をするための思考法を取り込む意味では、社内から人材を探すよりも外部のパートナーの協力を得るほうが合理的であるという。
では実際にどのような流れでパートナーと協働すべきなのか、3つのステップを教えていただいた。

[Step.1]自社の解決すべき課題を認識する

最初のステップは課題認識だ。会社として何が一番解決したい課題なのか優先順位をつけておくことで、パートナーにも適切な形で協力をしてもらえる。

北尾:「優先順位をつける」とは言っていますが、どちらかといえば「課題はなんなのか」を真剣に考えてみてほしいと思います。例えば「御社の課題はなんですか」と聞くと、「売上を上げたい」「人をもっと採用したい」と返ってくるケースがありますが、それは課題ではありません。その奥にあるところまで、真剣に考える癖を付けてほしいですね。

村田:課題かどうかを見定めるには、どんな視点を持つと良いのでしょうか?

北尾:クリエイティブ的な思考は魔法ではないので、浅い課題は解決できないんです。「売上を上げたい」と言われても、「それはできない」という話になりますよね。

村田:なぜ売上を上げたいのか、論理的にブレイクダウンするのが大事なんですね。ここに第三者視点があることも、重要性が高そうです。

[Step.2]クリエイティブパートナーを選ぶ

次のステップでは、実際にクリエイティブパートナーを選ぶことになる。クリエイティブと聞くとどうしても制作物――アウトプットの質にこだわってしまいがちだが、北尾氏はそれよりも人と人の相性を見るべきだとしている。

北尾:コンペをするとどうしても「お題を解決してください」という協業の仕方になると思いますが、やはりお題の内容からきちんと議論すべきですし、その際はお互いをさらけ出し合って相談できる相手であることが非常に大事ですね。お互いの納得感が重要です。

村田:競合コンペをしてアウトプットだけで見ると、その仕事だけで終わってしまいそうですね。

北尾:「これを作ってほしい」というときはそれでいいと思いますが、経営課題を解決するとなると、違う気がしますね。

[Step.3]クリエイティブパートナーとコミュニケーションを取り続ける

最後のステップとして重要なのが、パートナーとのコミュニケーションの継続だ。コミュニケーションは当然取るべきものだが、北尾氏があえて言及する意図はどこにあるのだろうか。

北尾:例えば私は最近、「CMを作ってください」という単発のお仕事は極力お断りしています。なかなか一打席だけで結果を出すのは難しいからこそ、やってみて駄目だったことを改善していくところまで含めて実施したいんです。CMを打つ前段階からもさまざまな準備が必要ですしね。
特に経営には難しい課題が多いものですから、長期的にコミュニケーションを続けることが大事だと考えています。

クリエイティブ経営2023まとめ

今回のウェビナーのポイントをまとめると、以下のようになる。

今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。クリエイティブ経営2023にご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。

【無料ホワイトペーパー】
クリエイティブ経営2023―クリエイティブ・ディレクター北尾昌大に聞く、経営変革のためのクリエイティブの必要性―
本ホワイトペーパーは、2023年1月25日に開催したウェビナー資料のダイジェスト版となります。「ビジネス×クリエイティブ」による事業成長支援を手がける北尾氏に、クリエイティブが持つ役割と経営との関連性について事例をもとに紹介いただきました。