【イベントレポート】NFTで創る次世代ビジネス ―実践事例から学ぶ、新発想の事業を収益に繋げるNFTビジネス開発の3つのポイント―
23,000名(※2023年10月末時点)のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決するプロシェアリングサービスを運営する当社では、毎月10回程度のウェビナーを開催しております。
2022/07/12回では、Web3.0時代が到来する今、注目を集めるNFT(Non-Fungible Token)について、多くのTV/雑誌掲載実績を誇る、商品開発のプロフェッショナル 長谷川氏に、一見NFTとは関連性が見出しづらい「食」領域と掛け合わせた実践事例と、デジタル事業のみに留まらないNFTビジネスの可能性についてご紹介いただきました。
「最新のビジネスモデルやトレンドに関心がある」
「NFTを絡めた事業の具体例が知りたい」
こうしたお悩みを持つご担当者様はぜひご覧ください。
当日参加できなかった方、もう一度内容を振り返りたい方のために内容をまとめましたので、ご参考になれば幸いです。
長谷川 真吾氏
多くのTV/雑誌掲載実績を誇る、商品開発のプロ
大学卒業後、花王、世界初の技術を持つ食品加工メーカーに勤め、産地への買付けから加工、技術開発、マーケティング、商品化、営業、店鋪での販売まで小売のサプライチェーンの流れをすべて経験。
その後、株式会社ビーンズを起業。自社開発のオーガニック離乳食は伊勢丹等有名百貨店から依頼され店舗販売もスタートし、年商数億円規模に拡大、海外にも進出中。また、世の中にない「あったらいいな」という医療系食品を企画開発しコロナ禍に東京の有名病院にて販売開始し、患者様や病院から感謝される活動も展開。さらに、伊右衛門ブランドやWIRED CAFEや寺田倉庫の日本マルシェなど話題商品や企画のプロデュースも実施。
樋口 達也
株式会社サーキュレーション プロシェアリング本部マネジャー
金融コンサルティング企業を経て、サーキュレーションへ入社。製造業界を担当するセクションの責任者を務め、自らもB2Cのコマース領域を中心にプロシェアリングコンサルタントとして、100件以上のプロジェクトを担当。特に、(株)ユーグレナグループのD2C企業への支援では、経営者の戦略パートナーとして、社員ゼロ30名全員が業務委託のプロ人材という革新的な経営スタイルの実現に貢献。
板垣 和水
イベント企画・記事編集
慶應義塾大学在籍中にITベンチャーでのインターンに2年間従事。オウンドメディアのSEOやチームマネジメント、100本以上の記事ディレクション/ライティングに携わる。卒業後サーキュレーションに入社し、プロ人材の経験知見のアセスメント業務とコンテンツマーケターとしてオンラインイベントの企画〜運営を推進。
※プロフィール情報は2022/07/12時点のものになります。(尚、2022/10/12時点で長谷川氏は紗武鴻圭(さたけ ひろたか)氏に改名しております。)
Contents
急速に拡大するNFT市場の現状
NFT(Non-Fungible Token)とは非代替性トークンのことであり、ブロックチェーン技術を用いてデジタルデータを唯一無二の「デジタル資産」にできる技術だ。
デジタルデータなので、現実の世界に物質は存在しない。無形の資産でありながら、ピカソの原画や有名人の直筆サイン入りポスターのような、「替えが効かない」価値を生み出せるのがNFTの特徴なのだ。例えば、NFT化されたデジタルアートやTwitterのツイートが資産として高額で落札され、話題を呼んでいる。
こうした実例の登場も相まってNFTの注目度は右肩上がりで高まっており、市場は拡大中。2022年時点では30億ドル規模だが、2027年には136億ドル規模にまで成長すると予測されている。
NFTを取り入れた“食”の新規ビジネスとは?
NFT活用といえば真っ先にアート作品と結び付ける方も多いはずだが、そのほかにもさまざまなビジネスに取り入れられる可能性がある。今回はその実例として、株式会社ビーンズの長谷川氏が手掛ける事業についてお話を伺った。
長谷川氏が手掛けているのは食を中心としたD2Cブランドなど
長谷川氏は花王や食品加工メーカーを経て独立し、自社開発のオーガニック離乳食を開発。有名百貨店での店舗販売を中心に海外展開も行っている、商品開発のプロだ。現在は伊右衛門ブランドやWIRED CAFE、寺田倉庫の日本マルシェなど、さまざまな話題商品や企画のプロデュースを手掛けている。
経営不振や後継者問題の解決に挑む「NFT×日本食」の世界観
長谷川氏は新たに、食の分野でNFTを活用できないかと考案。特に日本の伝統文化である日本食に着目し、老舗事業者の経営不振や後継者問題に取り組んでいる。
長谷川:例えばワインを作っているのはぶどう農家ですが、農家なので商品をPRする発想もなければやり方もわからず、資金不足で廃業の危機に陥ったり、後継者不在で困ったりしています。こういう人たちとNFTを結び付けることにより、良い回転が生まれると考えました。
実際に長谷川氏が現在NFT化しているのは、日本酒や焼酎、醤油、味噌といった加工食品だ。時間をかけて発酵させるような、「自然の力を借りて作る食品」はNFT化向きだという。
樋口:実際に長谷川さんが描いている世界観が以下のようなものですね。「食をNFTでエンターテイメント化する」とはどういうことですか?
長谷川:「何か楽しそうだ」くらいのライトな感じでNFTを買ってもらうのがいいと思っています。興味を持ってみたらその実真面目なことをやっていた、というパターンですね。
まずはYouTubeの動画コンテンツなどを通して消費者に日本食について伝え、興味が湧いたら実際にNFTを購入してもらい、コミュニティを形成する。これが、長谷川氏が描く世界観の全体像だ。NFTを通してプロジェクトの参加者が増えれば、NFTとともにコミュニティの価値も高まり、もともとの課題だった経営や承継問題の解決につながる。
これがNFTならではの自助的な動きであり、一度の支援で終了するクラウドファンディングとは一線を画すものとなっている。
FNT×食の事業開発ストーリー
実際に長谷川氏がNFT×食の事業を開発するにあたって踏んだステップは、以下の通りだ。
まず重要なのは、自社の事業や商品、ブランドの洗い出しだ。その上で、逆説的な視点を持つべきだという。
長谷川:例えば「電卓」は一見NFT化できないと思われそうですが、実はすごい価値があるかもしれません。食品にしても、一度「食品」という視点を外す、もしくは異なる視点を持つ人にヒアリングをしてみることです。
ステップ1で洗い出した内容は、ステップ2で「役に立つor立たない」、「意味があるorない」で仕分けする。その中から「役には立たないが意味はあるもの」を発見するのが、ステップ3だ。長谷川氏はこの視点について、旅館に例えて解説している。
長谷川:「景色が見えない、温泉なしの一泊1万円の旅館」と「自室に温泉があり、きれいな景色が見える一泊10万円の旅館」があった場合、お金が払えるなら10万円を選びますよね。役に立つことだけを考えたら1万円の宿でいいと言う人もいると思いますが、「なぜ旅行に行きたいのか」を洗い出して、心が豊かになる内容を大事にしましょう。
そしてステップ4で、実際にNFT化への事業構想を検討する。ただ単に資金を払ってもらう、製品を開発するのではなく、所有することで価値の向上が見込めるかがポイントだ。
NFTを絡めた新発想の事業を創る3つのポイント
これまでは存在しなかった概念であるNFTは、ビジネス化においても勘所を捉えるのが難しい。どのように既存事業の中に情緒的価値を見出すのか、NFT化した際に本当に価値の向上を見込めるのか、見定めるための基準が必要だ。
そのための着眼点について、長谷川氏に3つのポイントを伺った。
[point.1]「NFTは遠い存在」を脱却する
樋口:最初のポイントは「『NFTは遠い存在』を脱却する」ですね。これはどういうことなのでしょうか?
長谷川:NFTの活かし方がわからない企業は多いと思うのですが、もっとライトに考えてみましょう。例えば駄菓子屋があったとして、駄菓子そのものに価値はなくても、海外の人からしてみるとお店の雰囲気や貼ってあるポスターには高い価値があります。
既存事業に対してNFT要素を付け加え、長谷川氏は実際にワインの所有権をNFTで販売できるようにした。ポイントは、商品に関連してどのような「権利」を付与できるのか。価値の転換さえできれば、NFTは決して遠い存在ではない。
[point.2]どんなものにも価値は存在する
樋口:ポイントの2つ目は、どんなものにも価値は存在するということですね。さらに早期の収益化を狙うなら、いかに海外市場を巻き込むかが鍵だと伺っています。
私自身、NFTがどのようにマネタイズにつながるのかイメージができていない部分があるため、併せて解説していただけますでしょうか?
長谷川:アイドルなんかがわかりやすいのですが、ライブチケットが10分で売り切れるのは、価値が高いからですよね。さらにチケットの番号にも価値が生まれます。
樋口:チケットの番号が若いほど価値が出て、所有欲をくすぐる感じでしょうか。
長谷川:ほかにも、チケットを手に入れた瞬間を動画で押さえれば、それも価値になります。要は「欲しい人がいるかどうか」だけが問われる、シンプルな話なんです。
誰が何を欲しがるのかは、文化圏や人それぞれの価値観に左右される。だからこそ国内のみならず、海外にまで視点を広げた検討が必要なのだろう。
[point.3]バカになる、そしてやる
最後のポイントについては、「面白そうだと感じたことならイニシャルコストをかけすぎずに、とにかくライトにスタートしてみるのが大事」と長谷川氏。
長谷川:ご存知の方も多いと思いますが、プリングルスのNFTである“味わえない”新フレーバーなんかは、食べられないのに即完売しました。
樋口:これも所有欲ですね。
一見すると「これに何の価値が?」「何の役にも立たないのに」と思われるような商品たち。これらをNFT化する際の何よりのポイントは、遊び心や「なぜだか欲しくなってしまう」人の心理――情緒的価値だと考えられる。当然、プリングルスのような例はブランドがあるからこそ成立するという見方もできるが、長谷川氏はだからこそ「接点が重要」とする。
長谷川:企業や個人、どちらからの発信でもいいので、YouTubeやTikTokなどでコンテンツを作り、接点にします。「楽しそう」が伝わればOKなんです。
NFTで創る次世代ビジネスまとめ
今回のウェビナーのポイントをまとめると以下のようになる。
今回ご紹介したウェビナーで使用した資料は、未公開部分も含め以下のリンクからDLできます。NFTで創る次世代ビジネスご興味を持たれた方は、ぜひご活用ください。