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生産性が8%上がり売上増加。現場と経営の溝があった多国籍な製造企業が自走できる組織となった変遷とは?

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生産性が8%上がり売上増加。現場と経営の溝があった多国籍な製造企業が自走できる組織となった変遷とは?

1992年に茨城県で創業以来、溶融亜鉛メッキ工場として実績を残してきたマルコ工業。成熟産業とも言われる中、2代目社長の藤谷一誠代表取締役(以下:藤谷社長)は国内トップ、海外進出の夢を抱いていました。大きく強い思いがある一方、現場にその想いを伝え改革していく事に課題を感じていました。そこで社長が頼ったのが、大手や中小の製造業で豊富なマネジメント経験を持った伊藤哉さん(以下:伊藤)です。職人気質な工場の現場が劇的に変化したプロセスを伺いました。

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将来に向けた現場の改革を牽引してくれるリーダーの育成が急務だと感じていた

マルコ工業株式会社 藤谷一誠代表取締役社長

外国籍の従業員が8割を占め、「日本企業」のイメージとは一線を画すグローバル色が強いマルコ工業

藤谷社長:当社は溶融亜鉛メッキを事業として取り扱っています。簡単に言えば、鉄をサビから守るためのコーティングですね。道路にあるポールやマンションの外階段など、日常生活の中で目につく鉄のほとんどが対象です。オリンピック関係など公共事業も手掛けています。

私は以前別の建築関係の企業に務めており、その後父が営んでいた当社に一般社員として入社しました。現場からスタートして経理や専務を担い、社長に就任したのが9年ほど前です。

従業員は50名ほどですが、製造業としては珍しく外国籍の方の比率が高いのが特徴です。製造業の外国籍労働者の比率は一般的に2割程と言われてるので、いわゆる「日本企業」というイメージとは全く毛色が違うのではないでしょうか。文化の違いもかなりありますが、とにかくみんなに楽しく働いてもらうことを目指しています。

職人気質な現場と経営サイドとの間に意識の格差があった

藤谷社長:当社は長期的なビジョンとして国内トップになることと海外進出を目指していきたいと思っていましたし、より業務を効率化して生産性を高めるために工場の建て替えも検討していました。

その中で課題だったのは、社内で意識の格差が大きかったことです。経営サイドのメンバーは私との距離が近い分将来を見据えた改革を進める必要性が伝わりやすかったのですが、現場は物理的な距離が離れているため私の思いが伝わりづらく、どちらかと言えば職人気質で、現場のやり方を変えたくないという傾向があったんです。

工場の建て替えでハード面だけをアップデートしても、ソフト面がついてこなければ意味がありません。現場、特にリーダー層の意識を数段階高めなければ、生産性向上や売上アップという目標が画餅になってしまうと考えていたところ、プロシェアリングという方法に辿り着きました。最初は常陽銀行さんからのご紹介でしたね。

自分の経歴をアピールするのではなく、親身になって企業サイドの課題をヒアリングしてくれたのが決め手

藤谷社長:紹介いただいたプロシェアリング会社は何社かありましたが、直感でまずはサーキュレーションさんの担当者の方に会ってみようと思いました。担当の土井さんは、プロ人材によって我々のような中小企業に経営革新を促す明確なビジョンを持って、ロジカルかつ簡潔にプロシェアリングの仕組みを話してくれたのが良かったです。信頼感を持てる人柄だったので、良い人を紹介してくれそうだと思いました。

土井さんが紹介してくれたのは5名ほどで、そのうち数名にお会いしましたが「伊藤さんがいい」とピンと来ました。というのも、大手企業などに長く所属していた方はどうしても大手志向が強くなってしまったり、経歴をアピールしがちだったり、上から目線のスタンスになってしまうことが多いんです。その点伊藤さんは自分の経歴よりも、「社長は何に困っているんですか?」と一生懸命問いかけてくれました。うちのことを良くしようと思ってくれているのだなと強く感じましたね。もちろん、金属加工の業界に長くいたので金属について分かるという点もポイントでした。

社長に明確な思いがあることを知り、自信を持ってプロジェクトを進められると確信した

大手企業から50名以下の中小企業まで数々の現場を経験して得た知見を基に、企業規模に合った生産性向上の実現を目指している

プロ人材 伊藤 哉氏

伊藤:私は当初日立金属でエンジニアとして働いており、その後100名規模の製造企業に転職しました。そこで50名前後の現場で管理者を務めたのですが、大失敗してしまって。これまで20数年間で身につけてきた大手企業の生産性向上の手法を小規模な企業で実施したら、全く上手くいかないことを身を以て経験しました。これは現場が悪いのではありません。大手には大手の、中小には中小のやり方があるのだとそのとき気付きました。ですから大手と中小、いずれの生産現場においても生産性を高めるために必要なプロセスを理解しているのが私のプロ人材としての強みですね。もちろん専門分野は金属工学の領域にはなるのですが、キーワードは「生産性向上」です。工場でモノを作るというカテゴリであれば、どんな業界であっても同じやり方を適用できると考えています。

マルコ工業さんの場合は生産性向上の前段階に必要な現場の意識改革を図りたいということだったので、私の製造現場でのマネジメント経験やノウハウをなんらかの形で提供できると考えて依頼をお引き受けしました。

あとは社長が明確な思いを持たれていたことも一緒にお仕事をしたいと思った大きな決め手でしたね。中には「とにかく現場改善をしてほしい」という要望しか無い企業もあるんです。もちろん生産性向上はどんな工場にとっても原則として必要なことですが、そもそも何がしたいのかという思いが無いまま外部から人間が入っても、現場が受け付けてくれません。藤谷社長は最初の面談時から明確な思いを伝えてくれましたから、私はそれを現場に伝えることでプロジェクトを確実に進められると思いました。溶融亜鉛メッキ加工は日本では成熟産業でも、海外でなら需要があると見込んで海外進出を考えているというビジョンにも共感しました。

2ヶ月にわたるディスカッションを経て、工場長の希望で現場の評価制度策定から着手

意識改革に加えて、営業と現場が連携した指揮命令系統を構築することをプロジェクトの最終ゴールとして設定

藤谷社長:支援はトータル1年半で、最初の1年は週に1回、最後の半年は月に2回という稼働頻度でした。カウンターパートは私や工場長、課長の3名です。

基本的に工場の現場というのは第三者が踏み入らない場所ですから、伊藤さんが来た当初は従業員も注目していて、「何が始まるんだろう?」という雰囲気でしたよ(笑)。

伊藤:工場は1拠点で、現場では45名ほどの従業員が働いていました。当初、現場の様子を見せてもらうと確かに指示命令系統が確立されていないきらいがありましたね。リーダー層も真面目な熟練の職人たちであるがゆえに、指示を出すよりも先に自分たちでなんとか仕事をこなそうとしてしまうんです。そのためキャパシティも限られてしまっていました。そこで今回のプロジェクトの最終的なゴールを「工場全体の意識改革を図り、営業→工場長→現場従業員という指揮命令系統を作ること」に定めました。

工場長を中心に現場の評価制度を策定。伊藤さんの提示する選択肢や助言によって一気に改革が前進した

伊藤:最初の2ヶ月は私と藤谷社長、工場長の3人でとにかくディスカッションを重ねました。一番のポイントは、改革のための手法を教えるよりも先に、とにかく社長がどういう思いを抱いていて、今後工場にどんな風に変わってもらうことを期待しているのか伝え続けたということです。

藤谷社長:以前から私がどんな方向に進んでいきたいのかはよく話していたのですが、第三者である伊藤さんが居るだけで議論場に漂う緊張感が違うのが印象的でしたね。私が単に思いとして語っているだけではなく、それを現実するためのプロジェクトがスタートしたのだという雰囲気が生まれました。

伊藤:ディスカッションを経て十分に思いを共有してから、いよいよ具体的な行動に着手することになりました。例えば生産性を高めるための現場活動や営業を交えた工程会議など、様々な選択肢を提示しましたね。その中で工場長が一番興味を示したのが現場への評価制度の導入だったので、まずはそこからスタートしました。

とはいえ、突然高度な評価を導入しても続けられません。一番大切なのは継続することですから、まずは雛形をお渡しして、簡単な項目から策定してもらうことにしました。私は壁打ち相手をしたりポイントをお伝えしたりしたくらいで、あとは工場長や課長が原案を作成し、藤谷社長がチェックするという形でしたね。

すぐに完全に皆さんだけで策定を進めるようになったのを見て、マルコ工業さんは何か一つ切り口や気付きがあれば、一気に成長できる将棋でいう王手状態の企業だったのだなと感じました。

「社長の掲げた目標に勝つためには?」という考え方で現場が一体となって生産性向上に取り組む雰囲気を醸成

伊藤:マルコ工業流の工場運営の手法を作り上げていくために、次の段階として具体的な業務にどんどん着手していきました。ある期間は評価制度を強化し、ある期間は改善活動に取り組むといったように、一定期間内で成果を上げられるような挑戦を繰り返したんです。もちろんこれは工場長一人の力ではできませんから、自ずとマネジメントを行う立場役割が確立されていき、工場全体が協力して取り組めるようにもなっていきました。

また、そのために藤谷社長に毎月の数値的な目標も設定してもらいましたよ。

藤谷社長:「社長VS生産」というタイトルで毎月社長に勝つことをモチベーションとしてもらい、生産性向上に取り組んだ感じですね。

伊藤:社長の掲げた目標を目指すことで、今までのやり方では100しかできなかったものを同じメンバーと時間で120にしておこう、という意識を持つことができるんです。受注生産の事業である以上、できる限りキャパシティを広げておくことが生産性向上の本質でもあります。

当然昼夜のシフト間の連携や工程間の連携が以前よりも活発になったのはもちろん、国籍を問わず従業員の方々が目標達成のためのアイディアを自発的に出し合って改善していましたよ。皆さんなかなかきっかけがなくて変えられなかっただけで、「こうした方がいいだろう」というアイディアはもともとお持ちだったんです。

工場長、リーダーを中心に国籍や役職に関係なく当事者意識を持って、自走できる企業へと成長

リーダー層にリーダーとしての自覚が生まれ、活発に意見を交換しあえる積極的な組織へと変化

藤谷社長:伊藤さんのご支援を通してさまざまな変化がありましたよ。例えば個々人がリーダーとしての自覚を持ち始めたこともその一つです。今までは何の発言もなかった会議で彼らが積極的に発言するようになり、多様な視点のアイディアが集まっています。

伊藤:藤谷社長が「うちは国籍も関係なく、優秀な人は誰でも評価する」とおっしゃっていたので、その言葉を工場長やリーダーの皆さんに私からも伝えました。誰にでもチャンスがあるとわかれば、みなさん積極的になります。あとは社長が失敗に寛容だということもポイントでしたね。やはり社長の思いを伝えてこそ変わる部分は大きいです。普通の経営者は思っていても言わないことが多いですから。

藤谷社長:みんな手法がわからない状態だったんですよね。そこを伊藤さんにアドバイスしてもらうことで、各々が自分たちのやるべき仕事を明確にできたのだと思います。これまでは私が逐一指示を出していましたが、最近は進捗報告を聞くだけになっているのでやることがなくなってしまいました(笑)。

伊藤:工場長に多大な活躍をしてもらったことはもちろんですが、カウンターパートだった課長も社長の素晴らしいパートナーに成長したと思います。社長の考えを正確に読み取りますし、元は現場の方なので現場へのアプローチが得意で、さらに資料作成なんかも上手なんですよ。

藤谷社長:自分たちでアウトプットする取り組みを繰り返したからこそですね。

生産量8%増加を筆頭に売上も増加。営業と現場が連携強化や、採用の入社後定着率向上など様々な良い影響が起きた

藤谷社長:生産性が上がった事で、前年度比よりも生産量が8%増え、それにより売上も増加しています。現場の影響を受けて、経営や営業サイドのメンバーもかなり売上をベースとした戦略を練るようになってきました。

伊藤:工場長と営業課長が情報交換をしている姿も見かけるようになりましたよね。当初描いていた営業→工場長→現場という流れに近い形になってきたのが本当にうれしいです。製造の現場をわかっている人が営業に歩み寄り、お互いの痛みを分かち合いながら頼り合うことは製造業が売上を作っていくための良い方法だと思います。

藤谷社長:あとは評価制度を導入したことで従業員全員が工場に求められる人物像を共有することができました。モチベーションアップになっていることはもちろん、どういう人と働きたいか共通認識があるので、面接でも的確な質問ができ、結果定着率が上がるので採用コストの削減にも繋がっています。

支援を通して、経営者の思いと目標とするゴールを示し続けることが重要だと学んだ

藤谷社長:当初は半年契約だったところ1年半もお付き合いいただきました。1つの目標を達成するとさらに「もっとこうしたい」という次の目標が生まれたので、支援継続をお願いしたという感じですね。

支援を通じて痛感したのは、社長自らがどんどん思いを発信していくべきなのだということです。経営者は売上を伸ばすための正解を求めて常にいろいろなことを考え続けているがゆえに、発言がブレます。今日思っていることと明日思っていることが異なるんです。そんな風に変化する考えを全て伝えると社員の負担になるのではという恐怖があり、口を閉ざしてしまう。しかし、そうした状況に慣れさえすれば課長や工場長のように成長してくれますし、状況に応じて言うことが変わっているだけで同じゴールに向かい続けていると感じてもらえるのだと学びました。

今後は伊藤さんがいなくても自走できるよう心がけていきますが、違う企業フェーズに至ったらまた協力いただきたいと思っています。末永く見守ってほしいですね。

また、今回の案件を通してプロシェアリングというアイディアは非常に面白いと感じました。プロ人材は中小企業が雇用するには負担が大きいですし、マッチングも難しいものです。そこを美味しいとこ取りができるビジネスモデルですから、興味深いですよ。

その中で、特にサーキュレーションさんは私たちのような中小企業に対しても真剣に掘り下げて考えてくれる会社だったのでありがたかったです。50名以下の企業であっても、こういったサービスにどんどん頼ればチャンスが広がるのだと実感できました。

伊藤:私としてもやりがいと学びのある案件を紹介いただけて感謝しています。支援で毎回ご訪問すると、社長が30分ほど時間を作って思いを話してくれたんですよね。その様々な思いを反映した案件でした。マルコ工業さんのような多国籍な企業であっても文化づくりのお手伝いができるのだという励ましにもなりました。ありがとうございます。

この業界は今後大きな発展のない成熟産業と言われますが、今後はぜひ国内トップと海外進出の夢を実現してほしいです。マルコ工業さんが業界の成功事例となれば、勇気づけられる経営者も多いと思います。頑張ってください!

1年半という期間で見違えるような改革を達成したマルコ工業さん。従業員の方々のポテンシャルの高さはもちろん、社長の明確な思いこそが成功の基盤になるのだと実感できる案件でした。

本日はお忙しい中、ありがとうございました!


左:プロ人材 伊藤哉氏
中央:マルコ工業株式会社 藤谷一誠代表取締役社長
右:サーキュレーション コンサルタント 土井啓義

工場の意識改革支援案件におけるまとめ

課題・概要

国内トップ、海外進出という長期的なビジョンの実現や工場の建て替えなどハード面の変化に向けて、特に工場のリーダー層の視座を数段階高めたいと思っていたものの、社長である自身の考えが上手く現場に伝わっていない閉塞感を感じていた。そんな中、大手と中小の金属加工の現場で長年活躍してきた伊藤さんがアサインされた

支援内容

・最初の2ヶ月で社長、工場長、伊藤さんの3名で現状分析と合わせてディスカッションを実施。社長が工場のマネジメント層にどのような期待をかけているのかをじっくり共有した

・3ヶ月目以降は、工場長自らが興味を持ったことから評価制度の策定を開始。壁打ち役やアドバイスをした後はブラッシュアップも自走できるようになった

・現場が一体となって社長の掲げた目標に挑戦していく施策をスタート。評価制度の強化や自発的な改善活動の取り組みに繋がった

・社長が設定した数値目標の達成を毎月のミッションとした

成果

・営業課長と工場長自らがお互いに情報交換を定期的に行うようになり、製販の連携が活発にできる会社になった

・プロジェクトを通して改善活動を行ったことで、社長の右腕となる人物を育成できるなど、リーダー層の育成に成功

・社長の設定した目標や前年対比での生産量をクリアするために昼夜のメンバーや工程間のメンバーが連携。生産性を高める工夫を従業員たち自らできるようになり、生産量が8%増えて売上増加。

・評価制度の導入によって求める人物像が明確になり、採用の入社後定着率の向上、採用コストの削減につながった

支援のポイント

・忙しいけれど会社の意識を変えたい熱心な社長の思いを現場に落とし込むためには、現場と経営両方の目線を併せ持つプロ人材が第三者として間に入ってくれるとスムーズ

・工場長はじめマネジメント層の目線を引き上げることが現場、ひいては会社全体の目線を引き上げることにつながる

・育成を社長自らが行うのは時間的にも立場的にも難しいので、プロジェクト単位でプロ人材にジョインしてもらえるプロシェアリングが有効打となる

・大手企業の工場での経験は中小企業でも重宝されるが、何よりプロ人材側が企業の課題解決のために本気で向き合うスタンスであることが大事。求められているのは過去の肩書ではなく、今何を一緒にしてくれるかである

企画編集:新井みゆ

写真撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)

取材協力:マルコ工業株式会社

※ 本記事はサーキュレーションのプロシェアリングサービスにおけるプロジェクト成功事例です。

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