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【図解】コーポレートブランディングとは?〜第5の経営資源を事例企業のブランド戦略から学ぶ〜

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【図解】コーポレートブランディングとは?〜第5の経営資源を事例企業のブランド戦略から学ぶ〜

コーポレートブランディングは、商品・サービスのPRとは違うことは理解していても、実際に誰を対象に何を実施すれば良いのかわからないといった声が聞かれます。そこで今回は、コーポレートブランディングとは何か解説したうえで、近年のコーポレートブランディングの事例を紹介していきます。

 

コーポレートブランディングとは?

コーポレートブランディングとは、企業ブランドを構築することによって、企業価値を向上させることをいいます。商品・サービスのPRを個別に考えるプロダクトマーケティングに対して、コーポレートブランディングは、企業全体のイメージを向上させて、価値を高めていくものです。4大経営資源とされるヒト・モノ・カネ・情報に次いで、ブランドは第5の資源と位置づけられるようになって来ました。

コーポレートブランディングやプロダクトマーケティングの手法には、メールやSNS、ディスプレイ広告などによるオンラインマーケティングと、テレビCMを中心としたオフラインマーケティングがあります。企業の一般的なマーケティング戦略では、コーポレートブランディングよりも、プロダクトマーケティングに比重が置かれています。

コーポレートブランディングの目的と効果

では、コーポレートブランディングは、誰に対する効果を、どのような目的で実施するべきものなのでしょうか?

コーポレートブランディングはマーケティングのためだけのものではなく、顧客以外にも、出資者や従業員といった様々なステークホルダーに効果があります。コーポレートブランディングによってステークホルダーの感情に訴え、そして支持されると、中長期的に安定した利益の確保が期待できます。

マーケティング面からの顧客への効果

コーポレートブランディングによって、社会における企業の信頼性が高まれば、顧客が自社の商品やサービスに安心感を持つため、販売しやすい環境を構築できます。また、環境問題やコンプライアンスへの取り組みなどの企業姿勢を評価して、商品を選択する顧客も少なくありません。「良い企業イメージ」を構築することは、マーケティングにおいても重要となっているのです。

出資者(銀行・投資家)への効果

企業活動では、新規事業の立ち上げや運転資金の確保など、資金調達が必要とされる局面が多々あり、出資を募ったり、融資を受けたりすることが不可欠です。当然のことながら、出資や融資の判断基準になるのは、財務状況や事業計画、商品やサービスの内容などです。それに加えて、コーポレートブランディングによって信頼性や将来性が認められ、企業の社会的価値や経営姿勢が銀行や投資家に支持されれば、資金調達を有利に進めることができます。

人材採用面でのブランディング効果

コーポレートブランディングは、採用ブランディングの面でも効果をもたらします。採用ブランディングとは、端的にいえば「この企業で働きたい」と思わせること。高額な報酬を提示すれば、優秀な人材を確保できるとは限りません。報酬に惹かれて入社した人は、他社からさらに好条件の待遇を提示されると、去ってしまいやすい面があるからです。そのため、「社会的に意義のある仕事か」、「価値観を共有できるか」、「カルチャーにフィットするか」といった面から、「この企業で働きたい」と思わせることが重要になるのです。コーポレートブランディングによって、多くの人が憧れを抱く企業になれば、人材が自然に集まりやすくなります。

少子高齢化を発端とした労働人口の減少により、人材難は今後も続くと見られています。人材採用面において、コーポレートブランディングの必要性はますます高まっていくでしょう。

組織風土による従業員への効果

優れた人材を確保しても、意欲的に仕事に取り組める風土がなければ、実力通りの成果を引き出せないことがあります。たとえば、「売上○○億円を目指すビジネス」を掲げる企業と、「世の中のために○○で貢献するビジネス」を進める企業では、後者の方が従業員が誇りを持って仕事に取り組めるのではないでしょうか。コーポレートブランディングによって、従業員が企業の存在価値を共有し、自社にポジティブな印象を持つと、モチベーションがアップして成果につながっていくことが期待できます。

今コーポレートブランディングに求められる姿

企業が自ら意図したイメージを構築し、それを企業ブランドと伝えることは今も昔も大事であることに変わりはありません。加えて、近年では企業経営には社会性も求められて来ています。

社会性を指し示す例と挙げられるのは、たとえば、国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」への取り組み。また、ビジネスを通じて社会問題の解決を図る「CSV経営」や、より良い社会のために新しい社会的価値を創造する「ソーシャルイノベーション」事業の実施なども、社会的意義のあるものです。こうした企業活動を通じて、企業の存在意義を伝えるコーポレートブランディングができれば、顧客など多くのステークスホルダーからの支持を得られ、持続性のある成長に繋がっていきます。

近年のデジタルマーケティングを活用した事例

近年のデジタルマーケティングを活用したコーポレートブランディングの事例として、フリマアプリ「メルカリ」を手掛けるメルカリのケースを見ていきます。

今のメルカリをヒト・コトで伝える「mercan」

メルカリでは、『メルカリのはたらくを伝える』というコンセプトのもと、オウンドメディア「mercan」を運営しています。ヒトやコトにフォーカスを当てて『メルカリの今』を伝えるもので、採用チームが運用を担当し、採用・コーポレートブランディングに特化させたオウンドメディアという位置づけです。北米や欧州への海外進出やグループ会社の成長、さらなるミッションの達成のため、メルカリでは多くの人材を必要としていることが背景にあります。

「mercan」がもたらす効果~組織風土面~

「mercan」では、プロデューサーやエンジニア、デザイナー、カスタマーサービス、コーポレートメンバーなど、メルカリで活躍している全ての従業員に対して、MVPを獲得した人も、一担当者も幅広く取り上げてインタビューしているのが特徴。メルカリのPRを話し合うイベント「Mercari PR TALK #1」(※)での対談によると、ボトムアップ文化のメルカリにおいて、「mercan」が社員のモチベーションにプラスになっているとのこと。社内の良いところはどんなことでもオープンにし、紹介された社員のモチベーションを上げていくことは、メルカリが掲げる「Go Bold」、大胆にチャレンジしようという組織風土の促進にも役立っています。

Mercari PR TALK #1:取締役社長兼COOの小泉氏とPRグループマネージャーの矢嶋氏、中澤氏が登壇し、メルカリPRのこれまでの歩みや今後について対談するミートアップイベント

「mercan」がもたらす効果~人材採用面~

社員やイベントを紹介する「merucan」は人材の採用においても役立っています。この「mercan」で紹介する記事には、「え、こんなことも載せちゃうの?」と思うようなものも多く目につきます。しかし代表取締役社長兼COOの小泉氏は、「組織文化がないと簡単にはマネできないので全く気にしない。」と自賛(「Mercari PR TALK #1」にて)するほど、メルカリの組織文化に誇りを持っています。そして『メルカリで働くことに興味を持ってもらう』という狙いにあるように、あえてそれをメルカリブランドとしてオープンにすることで、カルチャーにフィットする人材を集めることに利用しています。

「mercan」がもたらす効果~IR・マーケティング面~

「mercan」は他にも、経営陣へのインタビューや社内外で実施されたイベント、取り組んでいる事業についても紹介しています。「今」と「これから」のメルカリを見ることができるということは、投資家や一般ユーザ-にとっては貴重な情報源。つまり、メルカリが始めようとしている新しいサービスや、将来にわたる企業を、ユーザーや投資家に対してアピールする場ともなっているのです。

このように、「mercan」は「メルカリ」というブランドの魅力をフリマアプリを手掛ける企業らしく、スピーディーに伝えるプラットフォームといえるでしょう。

ネット事業だからこそ、オフラインイベントにも投資

メルカリはフリマアプリですが、オフラインのリアルイベントにも力を入れています。リアルフリマの「メルカリフリマ」が、2014年11月から第一回の東京・お台場を皮切りに仙台や新潟、福岡、沖縄など、全国各地で定期的に開催されて来ました。ネットアプリ内で出店者の募集が行われ、多くのユーザーも訪れ、ユーザーロイヤリティを高めるとともに、メルカリの魅力を伝えるイベントでもあります。

「メルカリフリマ」では、一般的なフリーマーケットの他に、「メルカリフリマ」ならではのイベントも催されています。「キッズフリーマーケット」は、子供自身が売買を行うことで、金銭教育やリサイクル教育につなげることを目的としたもの。「エコボックス」では、不要になった服や雑貨を持っていくと、ブース内の欲しい物を無料で持ち帰ることができます。出店しない人も、気軽にエコに参加できるように実施している取り組みです。

メルカリは、『新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る』ことを組織の目的・企業理念に掲げています。つまり他の人にはとっては価値があるものが捨てられ、地球資源の無駄になってしまうことを防ぐことが目的であり、ネットフリーマーケットはこのミッションを達成するための一手段に過ぎません。そのため、オフラインイベントでリユースを促進することも大切にしているのです。

あらゆるメディアを戦略的に活用するメルカリの手法

従来のマーケティング戦略では、商品・サービスのPRに重きを置いたものが多くありますが、「mercan」は、自社にフィットする人材の確保を目的としたコーポレートブランディングを主眼としたものです。さらにメルカリでは、次世代マーケティングと称して、あらゆるメディアを戦略的に活用したサービスのPRを行っています。

メルカリでは、GMV(流通総額)が伸び続ける仕組みづくりと、中長期的なブランディングを一つのマーケティングチームで完結しているのも特徴です。マーケティングチームの仕事は、4つの機能に分類されています。

オフラインマーケティング

主にテレテテレビCMを使って、メルカリの認知の拡大とサービスの熟知を図るのが狙いです。

オンラインマーケティング

認知や理解を広めた後の展開として、GoogleやFacebookなどと連携した広告配信を行い、ユーザーを獲得しています。

「ハイブリットマーケティング」と「グロースマーケティング」は一般的にはオンラインマーケティングに含まれるものです。

ハイブリットマーケティング

タレントなどの出品キャンペーンやインフルエンサーのSNSを通じて、サービスの認知をしている潜在顧客にアプリのインストールを促しています。

グロースマーケティング

新規ユーザーの獲得や既存ユーザーの利用促進のため、ポイントやクーポンを用いています。

こうした横断的なマーケティング戦略やオフラインのリアルイベントによって、メルカリは「愛されるブランド」づくりを行い、事業の拡大を目指しているのです。

まとめ

メルカリの事例で見られるように、企業ブランドを高めるのはメインチャネルが全てではありません。コーポレートブランディングでは、企業ブランドを高めることを軸に、商品・サービスのPRと連携して、オンラインとオフランのあらゆるチャネルを大切にしていくことが、ビジネスの拡大に繋がっていきます。

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