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BtoBマーケティング
2019年12月25日

これだけは知っておきたい・インナーブランディングの基礎

これだけは知っておきたい・インナーブランディングの基礎

社外ではなく、社内に対して企業や製品のブランディングを行うインナーブランディング。ブランドが乱立し差別化が困難な現在において、インナーブランディングを戦略的に行い、競争優位性を確保している企業が存在します。インナーブランディングとは何か、外部に対するブランディングとの違いは何か、インナーブランディングのメリットは何か等々、インナーブランディングの基礎を解説します。

インナーブランディングについて学ぶ

インナーブランディングとは何か?

インナーブランディング(Inner branding)はインターナルブランディング(Internal branding)とも呼ばれ、社外に対してではなく社内に対して行われるブランディングのことです。一般に企業や製品・サービスのブランドを構築するための一連の活動をブランディング、またはブランドビルディングと呼びますが、インターブランディングは消費者に対してではなく、社員や株主などの、身内のステークホルダーに対して行われます。インターブランディングは、何を目的に行われるのでしょうか。

エクスターナルブランディングとの違い

インナーブランディングが行われる目的を理解するために、エクスターナルブランディングとの違いを把握しておきましょう。

ブランディングの対象者

インターブランディングは、社員を中心とした社内のステークホルダーに対して行われます。一方、エクスターナルブランディングは、消費者やユーザーを対象に行われます。パブリックリレーションズの活動などを含めると、広義のエクスターナルブランディングは、地域社会や特定のコミュニティ、政府などの公的機関を対象とすることもあります。

メッセージの主旨

インナーブランディングでは、主に企業や製品・サービスのビジョンや理念がメッセージとして語られます。一方、エクスターナルブランディングでは、企業・製品・サービスのブランドバリューがメッセージとして語られます。多くの場合、ブランドを構成するブランドアソシエーションなどがメッセージとして発信されます。

メディアの利用

一般的なインナーブランディングでは、メディアが使われることはほとんどありません。メッセージを共有するためにFacebookやLinkedInなどのグループ機能が使われることはありますが、エクスターナルブランディングが使うようなマスメディアやインターネットメディアが大々的に使われることはありません。一方、エクスターナルブランディングでは、世に存在するあらゆるタイプのメディアが、ブランディングの目的と規模に応じて、適時利用されます。また、ソーシャルメディアも大々的に利用されます。

価値観の共有

インナーブランディングでは価値観の共有こそがもっとも重要で、これの実現のために各種の努力が投じられます。価値観を共有し、社員全員が自社製品・サービスのエバンジェリストとなるのがインナーブランディングの究極の目的です。一方、エクスターナルブランディングでは、対象者のうちのできるだけ多くの人に価値観の共有を求めますが、インナーブランディングほど強くは求めません。

ビジョンステートメントの利用の有無

多くのインナーブランディングでは会社・製品・サービスのビジョンやミッションを記したビジョンステートメントが使われます。一方、エクスターナルブランディングでビジョンステートメントが使われることは多くありません。

ブランディングの目標

繰り返しになりますが、インナーブランディングの究極の目標は、社員による理念・価値観の共有です。一方、エクスターナルブランディングの究極の目標は製品・サービスの販売です。製品・サービスの認知を促し、実際に接触の機会を提供し、最終的に販売することが重要です。製品やサービスの理念や価値観を消費者と共有するという側面もありますが、エクスターナルブランディングではあくまでも要素の一部です。

インナーブランディングのメリット

インナーブランディングを行うメリットは何か詳しくみていきましょう。

社員のロイヤルティー向上

インナーブランディングのメリットのひとつに社員のロイヤルティー向上があります。ビジョンステートメントなどで会社・製品・サービスのビジョンを共有することで、会社に対する好感度が増加し、労働倫理やモチベーションが高まるという副次的な効果を生み出します。

社員同士の連帯感強化

社員全員がメンバーの一員であるという連帯感を強化できるのもインナーブランディングのメリットです。メンバーがお互いに助け合い、チーム全体の生産性が高まる効果も期待できます。

共感する人材の採用

会社・製品・サービスのビジョンや価値観に共有する人材の採用を可能にするのもインナーブランディングのメリットです。強力なビジョンや価値観は多くのファンを生み、チームに参加したいという強いモチベーションを持った人材を引き付けます。採用コストも相応に低下し、社員の離職率を下げる効果が期待できます。

社員による情報発信

社員による情報発信が期待できるのもメリットです。特にビジョンや価値観に強く賛同する社員は、自ら積極的に会社・製品・サービスの情報を発信します。FacebookやTwitterなどで情報を発信し、情報を広く拡散してくれる社員も出てくることが期待されます。ソーシャルメディアのフォロワーを多く抱えている社員の場合、その影響力は大きいでしょう。

インナーブランディングのデメリット

一方、インナーブランディングにはデメリットもあります。

コストがかかる

インナーブランディングを行う最大のデメリットはコストがかかることです。当たり前ですが、インナーブランディングは無料ではできません。特にしっかりしたビジョンステートメントを作成し、社員全員で共有するには各種のリソースが必要です。特に社内にビジョンステートメント作成の知見やノウハウがない場合、外部からコンサルタントを招く必要があります。また、ビジョンステートメントそのものを作成するにもコストがかかります。

時間がかかる

インナーブランディングの目的と内容を検討・策定し、各種の活動を計画し、社員全員にビジョンや理念を浸透させるには相当の時間が必要です。インナーブランディングは、今日採用して明日ただちに効果が出るといった、一朝一夕に芽が出るようなものではないのです。

価値観を共有しない社員を排除しがち

価値観を共有しない社員を排除しがちになるのもインナーブランディングのデメリットです。社員全員で価値観を共有することがインナーブランディングの理想ですが、現実には、100%の社員が価値観を共有するのは難しいことです。一般的には、インナーブランディングで定めた価値観の共有を求めすぎると、価値観を共有しない社員を排除する機運が生じます。最近の経営戦略では人材の多様性をテーマにするケースが増えていますが、そうした機運が生じた場合、人材の多様性確保のトレンドと逆行することになります。

バリューが不十分の場合、逆効果も

会社・製品・サービスのバリューが不十分の場合、せっかくのブランディングが逆効果になるリスクがあります。バリューが不十分とは、インナーブランディングのビジョンやミッションが不明瞭であったり、実現可能性がなかったり、反社会的であったりといったケースです。このような場合も、社員の共有が得られなかったり、ミッションそのものを達成できない結果に終わる可能性が高くなります。

インナーブランディングの事例紹介:ザッポスのケース

ここでは、インナーブランディングの事例として、アメリカの大手オンラインシューストアのザッポスのケースを紹介します。

ザッポスは独自に打ち立てたユニークな企業文化を持つ会社として知られています。1999年の設立当初より高いカスタマーサービスが評判となり、オンラインシューストアとして瞬く間に急成長しました。

ザッポスの企業文化を支えるのは、同社が「10のコアバリュー」と呼ぶ理念です。いずれも独特でユニークですが、以下にご紹介しましょう。

  1. サービスを通じてWow(ワウ)をお届けせよ。
  2. 変化を受け入れ、操れ。
  3. 面白さと、ほんの少しの「変わり者」をクリエイトせよ。
  4. 冒険的で、クリエイティブで、オープンマインドであれ。
  5. 成長と学習を追い求めよ。
  6. コミュニケーションとともにオープンで正直な関係を構築せよ。
  7. ポジティブなチームとファミリースピリットを構築せよ。
  8. より少ない力でより多くをせよ。
  9. 情熱的で、大志を持て。
  10. 謙虚であれ。

いずれも企業活動に関する理念というよりは、生き方やライフスタイルに関する理念です。ザッポスは、社員がこの10のコアバリューを本当に実践することで、ザッポスという会社全体のカルチャーを醸成できると考えています。

10のバリューを徹底するために、ザッポスでは専門のトレーニングチームによる「ザッポスのカルチャーを守るための」定期トレーニングが実施されています。定期トレーニングの実施時間は社員一人当たり225時間にも及び、ザッポスの価値観が徹底的に植えつけられます。

ザッポスはまた、ユニークな採用方法をとることでも知られています。ザッポスは、同社の価値観に賛同し、文化的に「フィット」する人材を採用するために相当の時間とコストをかけています。ザッポスのリクルーターは、採用候補者と数か月に及ぶ「文化フィット面接」を実施し、採用候補者がザッポスの文化を正しく理解し、入社後も徹底できるか厳しくチェックします。

ザッポスのインナーブランディングの究極のシンボルは、同社が毎年発行している「ザッポス・カルチャーブック」でしょう。ザッポスの社員によって執筆されるカルチャーブックには、ザッポスのカルチャーに関する日常の出来事や、カスタマー・エクスペリエンスといった実話が豊富に盛り込まれています。この、ビジョンステートメントの集大成とも呼ぶべきカルチャーブックにより、ザッポスの社員は価値観やビジョンを共有し、日々高めているのです。

インナーブランディングの事例紹介:KPMGのケース

大手監査法人KPMGも、インナーブランディングを使って社員のモラルとモチベーションの向上を実現しています。監査法人の仕事は、ともすれば退屈で事務的なものになりがちです。そんな中、KPMGは2014年に「あなたがここにいるのには理由がある」というインナーブランディング・キャンペーンを立ち上げました。

世界各国のKPMGの社員が「私の仕事の意味とは」という質問に応えるインタビュー動画が作成され、自分の仕事が南アフリカのネルソン・マンデラ大統領を選出した選挙に関係していることや、NASAによる宇宙ステーション建設プロジェクトにかかわっていること、イランのアメリカ大使館で発生したアメリカ人人質解放事件とつながっていることなどが次々に紹介されました。

加えて、KPMGの経営陣は、社員に自分の仕事についてより積極的に発信することと、自分の顔をモデルにしたポスターを印刷して配布することなども奨励しました。当時のCEOのリーダーシップにより、その年の感謝祭の日までに1万のインタビュー動画を集めることが目標にされました。その結果、「私は農家のビジネスが拡大する支援をしている」「科学技術の向上を手伝っている」「平和に貢献している」「国防に寄与している」などといった社員の声が、42,000も集まったのです。

動画はKPMGのイントラネット(社内インターネット)で公開され、多くの動画が社内で拡散し、話題になりました。KPMGの社員は毎日単に退屈な事務作業をしているのではなく、世界の政治を動かす仕事や、人類の発展に寄与する大きな仕事をしているという事実とメッセージが社員全員で共有されたのです。モラルも大きく向上し、KPMGのヒューマンリソース担当副社長のブルース・パウ氏によると、「KPMGの歴史上、かつてないほどモラルスコアが高得点を記録した」そうです。社員による職場満足度も高まり、マネージャーの70%近くが「KPMG以外で仕事したいと思わない」と答えたそうです。

インナーブランディングを実践するためのポイント

最後に、インナーブランディングを実践するためのポイントをまとめます。

会社・製品のビジョンを明確にする

インナーブランディングを実践するためのポイントは、会社・製品・サービスのビジョンを明確にすることです。上述したザッポスでは10のコアバリューを設定し、社員に遵守するよう徹底しています。製品やサービスのインナーブランディングを行う際も、製品やサービスの持つバリューやコンセプトを明確にする必要があります。会社・製品のビジョンを明確にせずに、インターブランディングを実践することは不可能です。

ビジョンステートメントを用意する

ビジョンが書かれたビジョンステートメントを用意することも必要です。ビジョンステートメントにはビジョンの他に、ミッション、ゴール、ストレッチゴールなどについても、できるだけ詳細に書くことが有効です。ザッポスは、「ザッポス・カルチャーブック」を毎年発行していますが、同様にビジョンステートメントは最低でも年に一度は更新すべきでしょう。

評価・フィードバックを実施する

また、インターブランディングを評価・フィードバックすることもポイントです。特にビジョンやバリューが社員にしっかりと共有されているのか確認し、モラルやモチベーションの程度を把握することが重要です。ザッポスでは、マネージャーは労働時間の10%から20%を、部下のコアバリュー共有の確認に費やすよう奨励されているそうです。

トレーニング・教育を定期的に行う

トレーニング・教育を定期的に行うこともポイントです。上にザッポスでは専門のトレーニングチームによる「ザッポスのカルチャーを守るための」定期トレーニングが実施されていることを紹介しましたが、優れたインナーブランディングを実践している会社のほとんどで、インナーブランディング浸透を促す定期的なトレーニングが実施されています。定期的なトレーニングを行うことで社員のビジョン共有を強化し、モラルやモチベーションの向上が期待できます。

まとめ

インナーブランディングが実践される背景には、自社や自社製品・サービスの第一の信奉者は自社自身であるべきだという考え方があります。確かに、自社や自社製品・サービスの第一の信奉者が自社自身である場合の、エクスターナルブランディングにかける熱意の量は、そうでない場合よりもはるかに大きいでしょう。

心理学の世界では、「自らを愛せ」という古い言葉がありますが、インナーブランディングとは、その古い言葉を正しく実践しているに過ぎません。その意味で、インナーブランディングは、心理学やマーケティングを含む社会科学の世界における古くて新しいスキームのひとつなのかも知れません。

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