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人事制度
2019年3月7日

働き方改革のベストプラティクスは労働生産性向上を実現させること

働き方改革のベストプラティクスは労働生産性向上を実現させること

世の中のトレンドワードとしてすでに定着している「働き方改革」ですが、「働き方改革」を自社の経営にプラスになるように運用している企業の着地点は、ズバリ「労働生産性の向上」にあります。

労働生産性を向上させることで長時間労働の是正を実現しやすくなり従業員の負担が軽減される、長時間労働を是正することで労働生産性の向上に取り組みやすくなり企業収益の改善が図れる、という意味で両者は表裏一体な関係にあります。

世の中の企業には、「労働環境の改善」「経営の改善」の追及というトレードオフ関係にあるように見える二つの目的を達成するために働き方改革への対応に取り組むことが求められます。

働き方改革関連法とは

2010年以降、日本は人口減社会に突入しました。

そのことを受けて、2015年10月に発足した第3次安倍晋三改造内閣が、「一億総活躍社会」を目指すことを宣言しました。「一億総活躍社会」というのは、多様な働き方を可能にすることで働き手を増やし、人口減による労働力不足という大きな課題を解消するための政策です。

これに関して、「働き手を増やす」「出生率の上昇」「労働生産性の向上」という三つのスローガンが掲げられました。

働き手を増やす」というのは今まで労働市場に参加してこなかった女性や高齢者などの就労を促すことであり、「出生率の上昇」というのは社会保障制度を充実させることで子供を作りやすい世の中にすることであり、「労働生産性の向上」というのは労働者数が減少していく社会においても日本経済の維持成長を実現していくために労働による生産性を高めていくことです。

これらのことを実現するためには「働き方の見直し」が必要不可欠であり、それを後押しするために行われた労働基準法を始めとした労働各法の改正の総称を「働き方改革関連法」といいます。

項目 概要 施行開始日
残業時間の上限規制 以下のすべての条件を満たすことが求められます
・年 720 時間
・月 45 時間を超える月は 6 ヶ月まで
・2~6 カ月の平均が 80 時間以内、単月で 100 時間未満
2019年4月~
※中小企業は2020年4月~
有給休暇取得の義務化 年間 10 日以上の有給休暇がある労働者に対して年間 5 日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられます 2019年4月~
勤務間インターバル制度 勤務日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間のインターバルを置くことが義務付けられます(努力義務) 2019年4月~
産業医の機能強化 衛生委員会や産業医に対して従業員の健康管理に必要な情報を提供することが義務付けられます
※50 人以上の事業場が対象
2019年4月~
高度プロフェッショナル制度の創設 高度専門的な職務に就き年収が一定額以上の労働者に対して労働時間等の規制の対象外とすることができるようになります 2019年4月~
同一労働同一賃金 正社員と非正社員に関して、同一の労働をしたときは同一の賃金を支払うことが義務付けられます 2020年4月~
※中小企業は2021年4月~
中小企業への割増賃金率の猶予措置の廃止 月60時間以上の時間外労働に対して50%の割増賃金を支払うことに関して、中小企業に対する猶予が廃止されます 2019年4月~

働き方改革と労働生産性

多様な人材が働ける社会を実現するために、長時間労働の是正は働き方改革の掲げる目的の一つと言えるでしょう。一方で、業務量を減らして長時間労働をなくそうをすれば、組織としての成果は減ることになります。成果の高さと労働時間の削減を実現するためには、労働生産性の向上が不可欠なのです。

逆に言えば、労働生産性が向上すれば、業務に必要とされる時間が減少するため、組織としての成果や目標を落とすことなく長時間労働の是正を実現し、時短労働者や女性活用など、多様な働き方を認めることが可能になります

まさに、働き方の多様性を認めながら成果を上げることと、労働生産性の向上とは表裏一体の関係にあるのです。

日本の労働生産性が低い理由とは

日本の労働生産性は、世界の主要各国と比較して低いという実態があります。

日本生産性本部が2017年に調査した結果によりますと、時間当たりの労働生産性はOECD(経済協力開発機構)加盟35 ヵ国中20 位、1 人当たりの労働生産性はOECD加盟35 ヵ国中21 位、製造業の労働生産性にいたっては主要15か国中最低となっています。

そして、日本の労働生産性が低い最大の原因は、働き方にあります。

「長時間働くことが当たり前」という文化が定着していることが、労働生産性が低い状況から抜け出せない要因となっているのです。終戦直後のモノがない時代は国全体を豊かにしていくためにひたすら働くことが求められた部分もありましたが、現在はモノも豊かになり国内市場も成熟化しているため労働による付加価値を生み出しづらい状況にあります。そのような中で労働時間の長さが変わらないことにより、労働生産性の低い状態が続いてしまっているのです。

働き方改革による長時間労働是正への期待

働き方改革というのは、働くということに関する考え方を見直すということです。

今まで当たり前のように存在していた仕組みを見直し、仕事の取り組み方を変えていくということです。そうすることで、「働く時間ありき」という考え方から脱することができます。

働く時間が短くなっても、やるべきことがやれていれば、必要な成果が得られていればよいのだという考え方を、雇用する側も働く側も持つということです。そのことが実現すれば、必然的に長時間労働は改善されていきます。

先に解説した働き方改革関連法は、このような意識を持つことを全ての国民に促すためのきっかけとして打ち出されたという見方をすることもできます。

労働生産性向上が必要な理由

労働生産性というのは、「時間当たり、どの程度の価値を生み出したのか」を表すための指標です。

一般的に、アウトプット(=労働による成果)÷インプット(=労働時間)で計算した値を労働生産性とみなします。アウトプットからコストを引いた値が、企業の利益です。そしてほぼ全ての企業に共通する最大のコストは、人件費です。

そのような中、企業は生き残るために、現在の人件費コストで得られるアウトプットの値を最大化する、現在よりも低い人件費コストで現在のアウトプットの値を維持するための努力を続けていく必要があり、そのことと表裏一体なのが「労働生産性向上」です。「労働生産性向上」を実現するためには働き方の改革が必要不可欠であり、それに伴い、長時間労働の改善も実現されていきます。

さらに、「労働生産性向上」を実現することで企業業績の向上や安定化が図られ、雇用する側も働く側も共に幸せになることができます。そのことが、労働生産性向上が必要な理由の本質的な部分なのです。

長時間労働是正による労働生産性向上への期待

労働生産性向上を実現していくためには、仕事の仕組みの最適化を図る必要があります。

仕事の仕組みの最適化を図るというのは、今後必要な業務とはどのような内容であり、どのような進め方をしていき、どのような結果を求めることが最適なのかということを常に考えながら仕事をするということです。そうしていくためには、「今ある業務は、当然今後も必要な業務なのだ」という固定的な考え方を持たないようにすることが重要です。

しかし、これは人の意識の問題でもあり訴え続けるだけでは変わらない部分もあるため、企業として具体的な指針と行動を示すことが重要です。よりも短い労働時間で日常の業務を遂行する仕組みを作るためには、経営トップからのメッセージや、労働時間のモニタリング、各部署からのボトムアップの改善提案を義務付けるなど、業務の効率化を行わなければならない必然性を築き上げることが効果的です。

必要な施策を一つ一つ積み上げていくことで、「労働生産性向上」が実現されていきます。

働き方改革事例Ⅰ(長時間労働是正を労働生産性向上につなげる/AGCアメニテック株式会社)

情報システムの開発や販売、環境に関するコンサルティングの事業を行うAGCアメニテック株式会社は、従業員の健康管理のために労働時間の適正な管理が重要であるという認識に基づき、時間外労働削減への取り組みを推進しました。

そのために、残業の事前承認と事後報告、取締役による時間外労働を前提とした工数見積となっていないかのチェック、IDカードによる入退室時刻のチェックなどを実施しました。

そのような取り組みを行ったうえで、時間外労働を削減しつつ成果を上げていくための仕組みとして、会議や事務処理業務の見直しなどに着手し、労働生産性を高めていきました。

参考元:https://work-holiday.mhlw.go.jp/detail/04261.html

働き方改革事例Ⅱ(労働生産性向上を長時間労働是正につなげる/セラテックジャパン株式会社)

ファインセラミックスの精密一貫加工の事業を行うセラテックジャパン株式会社は、お客さまを喜ばせるために社員が働きやすい職場環境を形成するという理念に基づき、チームごとに、売上や経費、利益、時間当たりの生産性・採算性を日次や月次で管理する取り組みを実施しました。

そうすることで社員の労働生産性に対する意識を高めたうえで、年間の所定労働日数や会議時間の短縮などに取り組み、長時間労働の是正を実現していきました。

参考元:https://work-holiday.mhlw.go.jp/detail/04314.html

労働生産性診断に関するケーススタディ

ここからは、事例を用いて、労働生産性が高いのか低いのかの診断をしていきます。

アウトプット(=労働による成果)÷インプット(=労働時間)で表されるのが労働生産性です。以下の解説においては、アウトプットに関しては、数字に置き換えることのできるものを使用します。また、業務の内容によっては、インプットを労働者数に置き換えて計算することも可能です。なお、解説をわかりやすくするために、人件費(時給)を考慮することなく、数値を比較することにします。

計算に用いる具体的な指標としては、製造や販売の業務であれば、生産量や販売量(額)などを用いて労働生産性を計算します。事務の業務など一見数字に置き換えられない業務であっても、業務の効率性を数値化することなどにより、労働生産性を計算することが可能になります。

製造業務の事例

同じ機械を使って同じものを製造しているA工場とB工場があります。

  • A工場では、一日8時間働く労働者10人で製品10,000個を製造しました。
  • B工場では、一日8時間働く労働者12人で製品11,000個を製造しました。

両工場ともに、その月の稼働日数は20日間で、残業は発生しなかったものとします。

果たして、A工場とB工場のどちらの方が、労働生産性が高かったのでしょうか。以下に、それぞれの工場の労働生産性を計算してみます。

  • A工場の労働生産性

    • =1ヵ月の生産量10,000個÷労働者の1ヵ月の総労働時間(8×10×20)時間
    • ≒工場稼働時の1時間当たりの生産量6.3個
  • B工場の労働生産性

    • =1ヵ月の生産量11,000個÷労働者の1ヵ月の総労働時間(8×12×20)時間
    • ≒工場稼働時の1時間当たりの生産量5.7個

答えは、A工場の方が、労働生産性が高かったということになります。

労働生産性の計算に影響を与えたものは、それぞれの工場の製造現場に配置されている人数です。工場において、生産量を増やすためには人を増やさなければならないと誰もが考えますが、単純に頭数だけを増やせばよいというものではありません。

最も効率的で、時間と人あたりの生産量が最も高い最適な生産体制というものを考えた後に、必要最小限の人数を増やす必要があるのです。労働者の頭数が生産量に直結すると考えるのではなく、生産の仕組み自体を見直し人を適切に配備することが、労働生産性の向上につながります。

営業業務の事例

同じものを売るC営業マンとD営業マンがいます。

  • C営業マンは、50時間残業して100個を売りました。
  • D営業マンは、10時間残業して90個を売りました。

その月の所定労働時間は160時間だったとします。

果たして、C営業マンとD営業マンのどちらの方が、労働生産性が高かったのでしょうか。以下に、それぞれの営業マンの労働生産性を計算してみます。

  • C営業マンの労働生産性

    • =1ヵ月の販売数100個÷1ヵ月の総労働時間(160+50)時間
    • ≒1時間当たりの販売数0.48個
  • D営業マンの労働生産性

    • =1ヵ月の販売数90個÷1ヵ月の総労働時間(160+10)時間
    • ≒1時間当たりの販売数0.53個

答えは、D営業マンの方が、労働生産性が高かったということになります。

労働生産性の計算に影響を与えたものは、それぞれの営業マンの月の総労働時間です。営業の仕事は、一定のスキルレベルを超えた人材であれば、費やした時間と成果は比例しません。

より多くの成果を上げるためには、単に労働時間を増やすだけでなく、成果を高めるための営業方法というものを考える必要があるのです。一定の成果が挙げられている現状に甘んじることなく、より高い成果を上げるための方法を考え続け行動に移すことが、労働生産性の向上につながります。

なお、営業活動に関する会社の収益性を考慮した診断を行いたい場合は、アウトプットを販売数から獲得粗利益額に代えて労働生産性を計算することもできます。

販売業務の事例

同じ商品を販売するE店とF店があります。

  • E店では、一日8時間働くスタッフ2人と一日6時間働くスタッフ3人の合計5人で店を運営することで、1日当たり50万円の粗利益を得ています。
  • F店では、一日8時間働くスタッフ1人と一日6時間働くスタッフ5人の合計6人で店を運営することで、1日当たり60万円の粗利益を得ています。

果たして、E店とF店のどちらの方が、労働生産性が高かったのでしょうか。以下に、それぞれの店の労働生産性を計算してみます。

  • E店の労働生産性

    • =1日当たりの粗利益額50万円÷スタッフの1日の総労働時間(8×2+6×3)時間
    • ≒1時間当たりの粗利益額14,706円
  • F店の労働生産性

    • =1日当たりの粗利益額60万円÷スタッフの1日の総労働時間(8×1+6×5)時間
    • ≒1時間当たりの粗利益額15,789円

答えは、F店の方が、労働生産性が高かったということになります。

労働生産性の計算に影響を与えたものは、スタッフの総労働時間です。一見、8時間労働のフルタイムのスタッフが多いE店の方が生産性が高く見えます。しかし、F店は時短のスタッフを上手に活用し、利益を得ることに成功しています。

店舗における販売の仕事は、業務フローを最適化することが業績に良い影響を与えます。単にスタッフの頭数を揃えることに注力するのではなく、スタッフの配置と店全体の業務効率のバランスというものを考える必要があるのです。

フルタイムのスタッフにこだわることなく、業務フローを見直して効率的な運営スタイルを実現し、適切な人員配置を行うことが、労働生産性の向上につながります。

事務業務の事例

ある会社の事務部門のアウトソーシング導入事例について見てみます。

  • 今まで一日8時間働く事務員3人が一人当たり月平均40時間の残業をして、月合計100の仕事をこなしていました。
  • その後、業務の一部をアウトソーシングすることになり、事務員3人全員が残業をすることなく、月合計85の仕事をこなせるようになりました。

ちなみに、各月の所定労働時間は160時間だったとします。

果たして、アウトソーシング前とアウトソーシング後のどちらの方が、社内における労働生産性が高かったのでしょうか。以下に、アウトソーシングの前と後の労働生産性を計算してみます。

  • アウトソーシング前の労働生産性

    • =1ヵ月当たりの仕事量100÷事務員の1ヵ月の総労働時間(160×3+40×3)時間
    • ≒1時間当たりの仕事量0.167
  • アウトソーシング後の労働生産性

    • =1ヵ月当たりの仕事量85÷事務員の1ヵ月の総労働時間(160×3)時間
    • ≒1時間当たりの仕事量0.177

答えは、アウトソーシング後の方が、労働生産性が高かったということになります。

労働生産性の計算に影響を与えたものは、事務員の残業時間です。事務の仕事は、効率が生産性を左右します。自社内で全てのことを処理すべき業務は何で、外注化したほうが効率が良くなる業務は何であるかを考える必要があります。

今回の事例では、アウトソーシングした後の方が社内の生産性が高まっていますから、アウトソーシングした業務に関しては、社内でこなすには生産性が低い業務だったと言えるでしょう。

事務作業においても、社内の得意不得意分野を見極め、必要であれば積極的にアウトソーシングを活用することが、労働生産性の向上につながります。

労働生産性向上を実現させるための具体的な方法

労働生産性の向上を実現させるためには、まずは経営層はマネジャー陣が、これまでの事業運営スタイルを刷新するという強い目的意識達成意欲を持ち、新しい方法や労働スタイルを柔軟に受け入れることで、初めてスタート地点に立つことができます。

その上で、日々の仕事の仕組みの最適化に取り組む必要があるのですが、そのためには、定期的に業務の棚卸を行うことが効果的です。業務の棚卸というのは、業務を大分類、中分類といった形で体系化し、業務ごとのフロー(=進め方)と担当している人間を洗い出したうえで、今後も必要な業務なのかどうか、必要な業務だったとしても不要な部分はないのだろうか、不要な部分がなかったとしても進め方を変えることはできないのだろうか、という視点で内容を精査し、必要に応じて業務フローの再設計を行うことです。

そのような取り組みを継続的に行うことで、無駄な業務を省き、「労働生産性の向上」「長時間労働の改善」が実現されていきます。

また、高い労働生産性が実現された職場においては、離職率の低下採用のしやすさなど、副次的な効果を得られることもあるでしょう。このように労働生産性の向上は、企業、労働者、社外の方々それぞれに良い影響を与えるのです。

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