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人事制度
2019年1月30日

【図解】戦略人事とは?〜終身雇用制度の従来型人事からエンゲージメントを高めるタンレトマネジメントへのシフト〜

【図解】戦略人事とは?〜終身雇用制度の従来型人事からエンゲージメントを高めるタンレトマネジメントへのシフト〜

戦略人事とは?

戦略人事とは、従来の管理業務中心の人事から、経営者に寄り添い、事業戦略をサポートする立場としてより人事に戦略性を持たせたものです。

デイビッド・ウルリッチが提唱した戦略人事

戦略人事は、『MBAの人材戦略』を執筆したことで知られる、ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が提唱した考え方です。

近年の企業を取り巻く社会は、ビジネスのスピードが速いだけではありません。ワークライフバランスや労働環境の整備が重視されるようになるなど、仕事に対する価値観が変化しました。終身雇用制等に重きを置いてきた、従来の人事制度に変革が求められているのです。

人事における戦略の位置付け

人事の機能は大きく3つの階層に分けられます。上から「戦略人事」、「インフラ人事」、「オペレーション人事」で、下層は上層に基づいて行われます。

そして「戦略人事」とは、企業の経営理念や事業戦略を理解し、それに沿った人事戦略を構築する機能です。その戦略を達成するために、人事業務に関する制度設計や人材開発を行う「インフラ人事」。労務管理やシステムの運用といったルーティーンワークから、トラブル対応等の日常業務を行う「オペレーション人事」となります。

戦略人事に必要な要素 ~ウルリッチが提唱する4要素~

ウルリッチは戦略人事について、以下の4つの要素が重要としています。

①ビジネスパートナー(BP)

経営者や事業責任者を支えるビジネスパートナーという考え方で、戦略人事を成功させるために必要不可欠な人材といえます。事業戦略を理解した上で、人と組織の面から戦略を立案・実行することができるプロフェッショナルです。

②センターオブエクセレンス(CoE)

「エクセレンス」とは、優秀・卓越という意味があります。戦略人事を担当する人材は、採用・人材開発・人事制度等、人事に関する業務全般に関して精通していることが大切なポイントです。

③組織開発&人材開発(OD&TD)

企業理念を組織に浸透させ、そして実行できる組織作りをしたり、企業理念を実行することができるリーダー人材の育成をしたりすることが求められます。組織開発・人材開発は、すぐに結果が得らえるわけではありません。中長期的な視点を持ち、定期的に見直しを行うことで、自社に合ったシステムを構築しましょう。

④オペレーション(OP)

人事における日常業務も、戦略人事を進める上で大切な仕事のひとつです。給与計算に入社事務、退社処理などの一連の業務を、正確にそして効率的にこなすことが求められます。

なぜ戦略人事が注目されているのか?

戦略人事は、経営戦略と人材戦略の2つを柱としており、迅速かつ的確な人材活用を可能にします。

戦略人事を導入するメリット~経営戦略とリンクしたスピーディーな人材活用~

企業が成長する過程で、営業や開発を厚くしたかったり、総務や財務の管理部門を厚くしたかったりといった人材登用に関する要望が変化することは珍しくありません。戦略人事では、経営戦略を基に人材戦略をたてるため、経営の状況に応じた人材活用がしやすいというメリットがあります。

経営戦略と人材戦略が両立していると、人材配置にタイムラグがなく、スピーディーな対応が可能になります。

日本で戦略人事が求められるワケ

従来型の人事制度~終身雇用は高度経済成長期の戦略人事だった~

日本では、高度経済成長期の人事制度が強く残っています。企業は優秀な人材を大量に採用して、あとは年齢によって自動的にステップアップさせていく。社員は、一生面倒を見てもらえる代わりに企業の為に尽くすという、終身雇用・大量採用・年功序列といった人事制度が一般的でした。これらの人事制度は、働けば働くほど豊かになる時代で、働く意欲が非常に強かったからこそ上手く回っていたシステムであり、この時代に合った人事戦略だったのです。

その結果、人事部門はいかにこのシステムを上手く運用していくかがメインとなりました。これはつまり、先ほど触れた「人事における戦略の位置付け」でいうところの、戦略人事がなく、インフラ整備・オペレーション(日常業務)が重視された状態であるのですが、当時はこれで企業運営を円滑に進めることができていました。

従来型の人事の限界と役割の変化

その後、急速な技術革新やIT化によってビジネスを取り巻く環境は目まぐるしく変化し、経営戦略にもスピード感や個別戦略が求められるようになりました。その一方で、少子高齢化が進んで労働人口が減少し、人材の大量採用が厳しさを増していきます。更に、働き方に対する価値観の多様化が起こり、キャリアが限られてしまうことや、志向が合わないといった理由で転職を選択するケースが増え、終身雇用等の従来の人事制度では対応できなくなったのです。

そのため、人事にも経営戦略に沿った個別戦略が必要となり、戦略人事が注目を浴びるようになりました。既存制度の運用が重視された結果、機能を失っていた戦略人事。広範囲にわたるその専門性故、戦略人事の実現に苦労、あるいは頓挫してしまう企業は少なくありません。

どうすれば戦略人事を導入できるのか

戦略人事を導入するにはどうすれば良いのでしょうか。大きな組織改革には長い年月と労力が掛かるのは事実ですが、取り組む前に諦めてしまうのはナンセンスです。実務上すぐに取り掛かることができるものもありますのでご紹介します。

経営の明確化と組織浸透

経営目標を達成するためには、経営者や従業員だけではなく、人事が重要なポイントです。経営・人事・従業員が三位一体になることで、スピード感を持って経営目標を達成することができます。

戦略人事では、経営戦略へのコミットが欠かせません。人事が経営理念や経営戦略を理解し、各部署の戦略を理解し検証しましょう。また、組織開発は戦略人事を考える上で、大切な仕事のひとつといえます。従業員の適性や資質、そしてストレス耐性などの把握をすると共に、個人間の繋がりにも注目して働きかけを行いましょう。最大限のパフォーマンスを引き出し、イノベーションが起きやすい環境を構築することが重要です。単にヒアリングをするだけではなく、必要に応じて外部の「従業員アセスメント」を活用することで、従業員のエンゲージメントを可視化し、より円滑に戦略人事をすすめることができます。

戦略人事の導入が難しい理由

ご紹介したように、戦略人事には沢山のメリットがありますが、導入が難しいと考えられています。戦略人事の必要性を理解していて、導入したいと思っているけれども、実際に戦略人事を展開しているケースは日本ではまだ少ないといえます。これは、従来の人事制度の影響で、人事が各部署に対して能動的な働きかけをするのが阻害されるケースがあることも一因ですが、他にも以下のような理由があります。戦略人事を導入する前に、その重要性を浸透させることが必要不可欠といえます。

・経営面での問題点

経営面では、戦略が不明確だと、経営戦略を基にした人材戦略を立てることが難しくなります。また、人事が人材登用を提言しても、経営者が受け入れないというケースも珍しくありません。戦略人事の重要性を、経営層に浸透させることが重要です。

・人事面での問題点

人事担当者が経営戦略を理解していないと、どんなに明確な経営戦略があったとしても人事制度に反映することが難しくなります。労務管理だけでなく、「攻めの人事」を展開するためには、人事に対する教育も外せません。

・従業員の問題点

終身雇用制や年功序列といった旧来の体制に慣れている従業員の中には、戦略人事の重要性を理解せず非協力的になる人もいます。戦略人事の必要性を説くだけではなく、従業員に対するメリットについても説明を行うことが大切です。

楽天株式会社における事例〜タレントマネジメントを活用するという戦略人事〜

楽天株式会社では、2016年に経営戦略を「Global Innovation Company」に設定しました。これに伴い、この経営戦略を支える人材像として「イントラプレナー」を掲げています。ここで重視しているのは、単に高パフォーマンスを上げる人材よりも、楽天のグローバルタレントとして、楽天の価値観を理解し実践する人材を育成するということです。

つまり、戦略人事にタレントマネジメントを活用し、社員が自発的に成長に向けて行動するように仕向けるための、多彩な仕組みを導入することで、「Global Innovation Company」という経営戦略を実現しようとしているのです。

楽天の戦略人事におけるキーワード

▼タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、従業員のことを「タレント」と呼び、タレントの持っているスキルや能力を把握し、能力を最大限に活かせるように、戦略的な人材配置や育成等の取り組みを行うことです。

「リーダー候補の育成」が一番の目的であり、企業理念を体現し将来の企業の経営に携わるリーダー人材の育成を行います。楽天ではグローバル展開を積極的にしており、「グローバルタレント」の育成に力を入れています。

▼イントラプレナー

楽天では、経営戦略に沿って、目標を達成するために必要な人材を「イントラプレナー」と呼んでいます。楽天株式会社 常務執行役員 人事・総務担当役員の杉原 章郎氏は、イントラプレナーを次のように定義しています。

「組織に所属しながらも柔軟な発想とつながりをもち、世にイノベーションを生み出す人材を指します。楽天では、変化・成長が促進され、多様な人材がつながりあうことでイノベーションを生み出し、成長につなげたいと考えています」

(引用:企業と人が成長し続けるための“戦略人事”~世界で戦うGEと楽天の人事に学ぶ~ 日本の人事部「HRカンファレンス」

楽天が行った人事改革

楽天で行われた企業戦略に沿った人事改革は、採用、配置・異動、育成、評価、報酬、環境の6つの人事機能に落とし込みがなされています。

①グローバル標準の手法を導入。ダイレクトリクルーティングによる通年採用の実施。

②『評価・研修』と連携した配置・異動。

③楽天主義を実践できる人材の育成。

④グループ全体で統一された評価基準。

⑤長期的なインセンティブなどを考慮した報酬制度。

⑥社員が自然と仕事に夢中になれ、社員が輝ける環境の整備。

これら以外にも、半年に1回、自身のキャリアに関する希望を提出できる自己申告制度や、社員のキャリア開発を促進するため、楽天グループ各事業の職務内容、必要人材等を社内に公開したり、時には新規事業やグローバル関連の新たなポジションに応募したりするOpenPosition制度という異動の仕組みを設けています。

人事は、自発的なキャリア開発を促す仕組みを整備することで、社員が優秀な人材に育つためのサポートをしています。そして社員は、従来の年功序列による評価や労務管理に縛られることなく、正当な評価を受けながらステップアップできるため、やる気を持つことができます。

このように楽天では、グローバル展開を目指した経営戦略を浸透・実現させるために人事制度を改革し、人事機能に落とし込みを行い、楽天の求めるグローバルタレントの育成を行っているのです。

おわりに

戦略人事は、ビジネスを取り巻く環境の変化にいち早く対応することができます。経営戦略と人事戦略を両立した戦略人事を取り入れることで、経営目標を達成することができるだけではなく、次世代リーダーの育成や従業員満足度の向上など多彩なメリットがあります。戦略人事を実践して、企業競争力を引き上げましょう。

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