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人事制度
2019年1月30日

人事制度を考える〜サイボウズ、メルカリ、ZOZOの成長企業から学ぶ組織課題に対する解決策〜

人事制度を考える〜サイボウズ、メルカリ、ZOZOの成長企業から学ぶ組織課題に対する解決策〜

企業にとって必要不可欠と言える人事制度ですが、構築や改革を図るにあたって何をするべきなのでしょうか?企業の成長とともに、人事制度が現状にそぐわないものとなっているケースも見られます。今回の記事では、人事制度とは何か、目的や役割、構成要素を解説し、改革のヒントとなる成長企業の事例を紹介していきます。

 

人事制度を理解するポイント

人事制度とは、等級や評価、報酬など人材の処遇に関するルールのことをいい、広義の意味では、福利厚生や人材教育なども含まれます。なぜ人事制度を設ける必要があるのか、人事制度の目的を踏まえたうえで、人事制度の構成要素について見ていきます。

人事制度の目的や役割

経営資源として挙げられる「ヒト・モノ・カネ」の中でも、企業活動で事業目的を達成し、事業拡大のカギとなっていくのは、「ヒト=人材」です。潤沢な資金や優れた商品・サービス、設備があったとしても、適切に運用することができなければ活かすことができません。さらに優秀な人材を採用しても、モチベーションを維持できなければ、能力が十分に発揮されないことも考えられます。そのため、「この企業で働きたい」という高い意欲をもって労働力を提供してもらうため、能力を活かして適材適所で働ける環境をつくることが人事制度の目的です。人事制度は、人材と企業を良好な関係でつなぐ役割をもっています。

また、人事制度には人材を育てていく役割もあります。従業員のスキルアップを図って育成していくためには、研修参加費や資格取得費用の補助などの教育制度が必要です。企業が人材を育てることによって、より高い能力を発揮できれば、企業の成長にもつながっていきます。

人事制度の構成要素とは

人事制度を構成する施策の中で核となるのは、等級制度と人事評価制度、報酬制度の3つです。

<等級制度>

等級制度は能力や職務、役割などから、「1等級」「2等級」…といったランクで序列化する仕組みです。評価や報酬のもとになるもののため、等級制度は人事制度の柱といわれています。人材を序列化するものには、他にも課長や部などの役職もありますが、「等級=役職」としている企業と、役職に対して対応する等級に幅をもたせている企業があります。

<人事評価制度>

人事評価制度は、一定期間の仕事の成果や取り組む姿勢を評価するもので、査定や人事考課とも呼ばれています。人事評価は、等級の昇格や降格、報酬の決定に関わる重要なものです。一般的に人事評価項目は等級によって異なります。

<報酬制度>

報酬制度は、等級や人事評価に基づいて、給与や賞与などの報酬を決める制度です。報酬は社員の採用や定着に深く関わるため、人件費の原資をいかに適切に配分していくかがポイントになります。かつての日本の給与体系は、年齢や勤続年数による年功給や職務を遂行する能力に応じた職能給が中心でしたが、担当業務によって決まる職務給や成果給の採用が広まってきました。

この他に、福利厚生や教育制度、労務管理、人員配置を決める人材管理制度なども人事制度に含まれます。福利厚生には、厚生年金や健康保険などの法定福利厚生と、企業が独自に決める法定外福利厚生があります。法定外福利厚生として一般的なのは、通勤交通費、住宅手当や社宅、保養所や提携宿泊施設の割引利用、社内レクリエーションや社員旅行などです。働く環境の整備を図るため、独自のユニークな制度を設けている企業も見られます。

人事制度に課題が出る要因と解決事例

ベンチャー企業が成長していく過程では、人事制度のあり方に課題が生まれて、見直しを迫られるケースがあります。人事制度に課題が出る要因と解決事例をもとに、人事制度改革のポイントを見ていきます。

【理由①】企業の成長に伴って制度が合わなくなる

創業期は、少数のコアメンバーで一体感をもって業務に邁進し、同じ世界観のもと、明確なルールがなくても、暗黙の了解で機能しているケースが少なくありません。しかし、拡大期になって新しい社員が増加すると、創業社員との間でギャップが生じ、組織がギクシャクしてしまいがちです。曖昧であった社内ルールや、管理職や個々の従業員の役割を明確にして、組織を整えていく必要があります。

組織の拡大に伴う問題へ対処したサイボウズ

サイボウズは1997年に創業し、グループウェア「サイボウズ Office」のリリースなどにより、順調に業績を伸ばして来ました。しかし、2005年になると、離職率が28%にまで急増し、人材確保に悩まされる事態に陥っていたのです。当時は右肩上がりで事業が成長しており、連日よる遅くまで全社員が働くことが常態化していました。給料は業績に見合った額が支給されていたこともあり、報酬が理由での退職は考えにくい状況です。そのため、離職率の高さの要因とされたのは長時間労働。創業期とは異なり社員が増加して、がむしゃらに働きたい社員ばかりではなく、仕事に対するモチベーションは異なることから、働き方を選べる人事制度が考案されたのです。

参考 ビルディンググループ:離職率28%→4%に低下させた“選択型人事制度”とは

サイボウズの導入した人事制度
  • 2007年 「選択型人事制度」で時間軸と場所軸から9パターンの働き方が選択可能
  • 2012年 「ウルトラワーク」の導入で選択した働き方以外も利用可能
  • 2012年 「副業許可」により、副業を行う際の上司への申請や承認が不要
  • 2014年 「子連れ出勤制度」の導入で緊急時の子連れ出勤が可能

 

9通りの働き方から選べる「選択型人事制度」

引用:ビルディンググループ:離職率28%→4%に低下させた“選択型人事制度”とは:社員自身が働き方を選べる人事制度

2007年にサイボウズが導入した「選択型人事制度」は、働く時間と場所をそれぞれ3通りから選択が可能で、9通りの働き方が選べます。働く時間の選択肢は、「時間を問わない」、「残業を少しする」、「定時、または短時間」の3つ。働く場所の3つの選択肢は、オフィスなど会社指定の場所と、自宅やカフェなど自由な場所で働く割合によるものです。ライフスタイルに合わせて、「オフィスで時間を気にせずに働く」ことも、「自宅など好きな場所で定時まで働く」ことも、自分で選べるようになりました。

さらに、2012年からは「ウルトラワーク」を導入。選択した働き方以外の働き方が、単発で概ね総労働時間の10%程度できるようになりました。たとえば、オフィスで働くことを選択している人が、子供の具合が悪い日に在宅勤務をすることが可能です。

また、2012年から社員が自分らしく働けるようにとの観点から、副業が認められるようになり、2014年からは、子供の預け先がない時などに子連れ出勤が可能になりました。

こうした人事制度の運用と社内コミュニケーションを活性化したことで、サイボウズの離職率は4%にまで下がっています。

 

【理由②】社会環境の変化に伴って制度が合わなくなる

ITテクノロジーの進化によって、あらゆる業界がITと結びつき、エンジニアの需要が増加しています。また、政府の進める働き方改革や少子高齢化による人手不足などから、業務を効率化し、生産性を向上させることが求められています。働き方の多様性を進める観点から、在宅ワークの導入も広まっています。

こうした社会環境の変化によって、年功序列等による従来の人事制度は、必ずしも企業にマッチするとはいえない状況になって来ているのです。そのような中、役職がなく、上司と部下という関係性がないフラットな組織、役割を分担して意思決定を行うホロクラシー経営を導入するなど、従来の日本の会社組織とは一線を画した企業も見られるようになってきました。

成長企業の事例に学ぶ人事制度

そこで、従来とは大きく異なる人事制度を設けている成長企業の事例を紹介します。

採用への効果も!メルカリの「merci box」

フリマアプリを手掛けるメルカリでは、採用経路の50%が社員による紹介。社員が友人や知人を紹介するほど、働きやすさを感じている理由の一つとなっているのが、「merci box」と名付けられた人事制度です。

ベンチャー企業は、大胆に勢いのある仕事を進められる反面、将来へのリスクによるマイナスイメージをもたれがちです。そこで、メルカリは『Go Bold-大胆にやろう』というバリューを掲げている一方で、病気やケガ、出産や育児などで働けない「ダークサイド」のリスクを支えるための人事制度を設けて、安心して働くことのできる環境を構築しています。

「merci box」の制度の例
  • 産休・育休中の給与を100%保障(女性は産前10週及び産後約6ヶ月間、男性は産後8週)
  • 育児・介護休暇は1年間で5日間まで特別有給休暇として有償化、最大10日間までの休暇の取得が可能
  • 子供の出産時に立ち会いのための特別休暇3日間とお祝金10万円を支給
  • 認可保育園に入園できず、認可外保育園に入園する場合の差額を負担
  • 病児保育の利用時の保育施設やベビーシッターの利用料を1時間当たり1500円補助
  • 不妊治療開始から10年間、保険適用の治療は実質本人負担額なし、保険適用外の治療は実質本人負担額3割
  • 全社員に対して、保険金数千万円~の死亡保険に加入

「merci box」は社員本人だけではなく、家族も支える制度。ただし、制度があっても、利用しやすい風土がなければ意味をなさないこともあります。その点メルカリでは、たとえば、育児休暇は社長や子会社の社長が率先して取得していることもあり、男性の取得率が9割を超えているなど、生きた制度となっています。

メルカリでは、コアタイムを12時〜16時とするフレックスタイム制を導入し、副業も容認しているなど、自由な働き方が可能。結婚や出産、育児、あるいは親の介護などのライフイベントを迎えても、柔軟に働きやすい環境が整えられたことは、採用と定着の両面で効果を発揮しています。価値観が多様化する中、自分らしく働き続けられることが支持されているといえるでしょう。

型破りな人事制度で自発性を生むZOZO(旧スタートトゥデイ)

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZO(旧スタートトゥデイ)の人事制度は、これまでの常識を打ち破る画期的なものが導入されています。

参考 サイボウズ式:「当たり前を疑う」1日6時間労働導入の狙い──スタートトゥデイ×サイボウズ、型破りな人事制度に込めた想い

ZOZOの画期的な人事制度
  • 給与の基本給と賞与は全員同額
  • 点数による人事効果を廃止
  • 6時間労働制の導入

まず、報酬制度を見ていくと、役職に応じた役職給がつきますが、基本給は全員同額で、部署による役職給の違いもありません。そして、基本給に対して賞与が決まるため、賞与まで全員同額です。しかし、賞与が同じでは社員から不平不満が出るのではないかと考えられます。その点では、ZOZOは競争よりも絆を重んじる企業風土があり、賞与は全員の努力で得た成果を分かち合うという考え方に基づくため、不満は出ないと言われています。

そして人事評価制度の面では、点数による人事考課がないのが特徴です。以前は点数化による人事考課が行われていましたが、点数による評価への根拠への疑問と、自分の行動で伝えていくことを重視する側面から、廃止されました。ただし、上司の判断によって毎月昇格が可能となっています。

さらに、ZOZOでは、6時間労働の導入に取り組んでいます。これは、代表の前沢氏が労働基準法の一日の労働時間の上限にあたる8時間労働に疑問を呈し、集中して仕事ができるのは3~4時間程度ではないかとする考えによるもの。社員へのヒアリングや検討を重ねた結果、生産性を向上させることで労働時間を短縮できる限界の時間として、6時間労働制が導入されました。実際には、定時で帰る社員もいますが、一日当たりの労働時間の平均がこれまでの9時間台から7時間台に減少するなど、一定の成果を挙げています。また、生産性を高めるために、どのように仕事を進めたら良いのか、社員が自発的に考えて行動するきっかけにもなっています。

ZOZOでは、人生を楽しくしていくため、当たり前になっている既存の制度への疑問点を解消する試みをこれからも続けていくでしょう。

まとめ

人事制度は企業と人材をつなげる核となるものとして、「カネ(=報酬)」が重視される傾向にありました。また、人事制度が注目されるのは、ベンチャー企業が創業期から成長期に移行し、中規模化や大規模化をしていく中で、人事制度の見直しを迫られるケースで多く見られました。近年は働く環境を整備する目的で人事制度を見直す傾向が強まっています。人事制度は企業の事業目的や事業戦略、人事戦略と一体で考えることが必要です。

 

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